道路橋梁の予防保全に最適な構造物モニタリングPoCシステムを開発

若尾 聡

東京エレクトロン デバイス株式会社

イノベーティブソリューションカンパニー

テクニカルマーケティング部

若尾 聡

老朽化が進む橋梁の予防保全型管理が急務

 国土交通省道路局の調べによると、現在日本全国には約73万橋の道路橋梁がある。このうち建設後50年を経過した橋梁の割合は2016年の時点で約20%もあり、2026年には約44%にまで増えるという。さらに約23万橋は建設年も分からない状態なのだそうだ。鉄筋コンクリートまたは鉄骨造りの橋梁の寿命は約60年と言われている。もちろん立地環境や維持管理状況によって異なるものの、多くの橋梁が新しく架替える時期に差し掛かっていることは間違いない。
 急速に老朽化が進む橋梁の予防保全策として、国土交通省は2014年に道路橋梁やトンネルなどの構造物を5年に1回の頻度で点検することを義務付けた省令を施行した。点検方法は近接目視を基本とし、必要に応じて触診や打音など非破壊検査を実施することになっている。
 実はこの定期点検の義務化が橋梁を管理する自治体を悩ませている。約73万橋の7割に当たる約52万橋が市町村道の橋梁であり、近接目視による点検対象の橋梁が多すぎるのである。しかも点検作業を行うには専門知識や実務経験が求められるので、対応しきれないのが実情なのだ。そのためやむなく遠望目視だけで点検する自治体も少なくない。
 だが、定期点検の義務化には理由がある。劣化・損傷が明らかになった段階で補修する対症療法的な事後保全型管理に比べ、定期点検を実施して劣化・損傷を未然に補修する予防保全型管理のほうが、維持・更新にかかる財政負担を軽減できるのだ。また、計画的な修繕を実施することで橋梁を長寿命化し、安全性の確保に寄与することにもなる。

加速度センサーによるモニタリングを実証実験

 こうした予防保全型管理を推進するには、近接目視による点検作業と同等の機能を備えた仕組みを用意することが望ましい。そこでIoTシステムの豊富な経験を持つTEDが取り組んだのがモニタリングシステムの開発だ。
 「予防保全型管理を行うための監視手法はさまざまですが、私たちが橋梁の状態監視に最適だと着目したのは『振動』でした。加速度センサーの活用により橋梁の長周期振動を計測することで、ヘルスモニタリングが行えると考えたのです」
 ただし、従来の加速度センサーはノイズ性能が悪く、長周期振動の測定が困難という課題があった。しかし最先端のMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を応用した加速度センサーが登場したことで、課題解決につながったという。
 「MEMS加速度センサーを利用したモニタリングを実証するために、TEDは千葉県市原市とJSCE(公益社団法人土木学会)の協力を得て、実際の橋梁にセンサーデバイスを設置して実験を行いました。その結果、橋梁構造や大きさに応じた構造物固有の共振周波数データが取得できることを確認できました」

千葉県市原市金比羅橋で実施したモニタリングシステムの実証実験
千葉県市原市金比羅橋で実施したモニタリングシステムの実証実験

 この実証実験を受けてTEDでは、橋梁の事前調査から加速度センサーによるデータ収集、分析モデルの実装、モニタリングシステムの運用までを一貫して提供する「構造物モニタリングPoCシステム」を開発した。このPoCシステムは、加速度センサーとIoTゲートウェイ、Azureによるシステム基盤で構成されており、センサーとゲートウェイ間は低消費電力と通信信頼性を両立させたメッシュ無線ネットワーク「SmartMesh」を採用している。
 構造物モニタリングPoCシステムは、自治体が目指す予防保全型管理を実現するための足掛かりになるものだ。TEDでは今後、協業パートナーと協力しながらPoCシステムによる実証実験を各自治体に働きかけていくという。

構造物モニタリングPoCシステムの構成図
構造物モニタリングPoCシステムの構成図