データ分析とAIがIoTビジネスを加速 ~
ハノーバーメッセ レポート

2018年4月23日~27日の5日間、ドイツ・ハノーバーで国際産業技術見本市「ハノーバーメッセ」が開催された。IoTによる製造業革命を目指す国家プロジェクト「Industry 4.0」に取り組んできたドイツをはじめとする欧米の最新事情について、東京エレクトロン デバイス(TED)執行役員 IoTカンパニー プレジデントの初見泰男がレポートする。

初見 泰男

東京エレクトロン デバイス株式会社

執行役員 IoTカンパニー プレジデント

初見 泰男

「IoT」「Industry 4.0」はすでに浸透

 ハノーバーメッセは、北ドイツ・ハノーファーのコンベンションセンターで毎年4月に開催される世界最大級の産業見本市。東京ビッグサイトの約5倍という広さの会場に例年約6,000社の企業が出展し、およそ20万人の来場者が訪れる。2011年のハノーバーメッセではドイツ政府が「Industry 4.0」のコンセプトを発表するなど、IoT分野における最新技術トレンドを占う場として、世界の産業界では広く認知されている展示会だ。

 そんなハノーバーメッセだが、TED IoTカンパニー プレジデントの初見泰男は「IoT分野のトレンドが大きく変わりつつある」と感じたという。

 「会場内でまず気付いたのが『IoT』『Industry 4.0』という言葉がほとんど見当たらなかったことです。これらはすでに浸透しているという印象を強く受けました。そして今回は、データ分析、AI、IoTとOperation Technology(OT)の融合といったテーマが目立っていました」

 初見がまず注目したのは、Digital Factoryの展示ホールで最も大きいマイクロソフトブースだ。

 「マイクロソフトはブースを年々拡大しており、産業機器市場に対する本気度が伺えました。今回は『Intelligent Manufacturing』というキーワードを掲げ、マイクロソフト自身のソリューションをはじめ、パートナーソリューションやお客様の導入事例なども多数展示し、他社とは一線を画す内容でした」

Digital Factoryの展示ホールで最大規模だったマイクロソフトブース
Digital Factoryの展示ホールで最大規模だったマイクロソフトブース

産業機器市場に注力するマイクロソフト

 マイクロソフトソリューションでは、エッジを意識した展示が非常に多かったという。「Azure Industrial IoT」コーナーにはPLC、HMI、制御PCなどAzureにつながるパートナー各社の認証デバイスが展示され、OPC-UA対応デバイスであればシームレスにAzureに接続できる「Reference Architecture Program」の紹介もあった。

 オンプレミスでもAzureのPaaSの機能が使える「Azure Stack」、および各社のAzure Stack対応サーバーが展示されていたほか、IoTデータの分析・可視化を実現するSaaS「IoT Central」も紹介されていた。

 さらにIoTビジネスを加速させるプラットフォームとして注目されていたのが「Azure Sphere」だ。

 「Azure Sphereは、コンシューマー機器向けIoTデバイスを開発するもので、ARMベースのMCU(Micro Controller Unit)とLinuxベースのOS、Azureクラウドサービスによる統合環境が一貫して提供されるセキュアプラットフォームです。EVチャージスタンドに適用する事例のデモが行われていました」

IoTデータを短時間のうちに容易に可視化できる「IoT Central」
IoTデータを短時間のうちに容易に可視化できる「IoT Central」
IoTデバイスを開発するためのセキュアプラットフォーム「Azure Sphere」
セキュアプラットフォーム「Azure Sphere」をEVチャージスタンドに適用したデモ

豊富なパートナーソリューションが続々登場

 パートナーソリューションを紹介するコーナーでは、アイスランド・Annata社が提供する「Annata 365 for Dynamics」という業種向け統合管理ツールが注目を集めていた。

 「このツールでは、Microsoft Dynamics 365を各業種で活用するためのテンプレートが提供されています。このツールを利用することにより、従来は各業種のお客様向けに実施していたカスタマイズが不要になり、Dynamics 365のサービスを即座に使い始めることができます。TEDもAnnata社との提携を予定しています」

業種向けの統合管理ツール「Annata 365 for Dynamics」
業種向けの統合管理ツール「Annata 365 for Dynamics」

“クラウド+エッジ”がトレンドに

 マイクロソフト以外も、多くのグローバル産業機器メーカーが新たなトレンドを発信していた。特にドイツのメーカー各社は、地元の威信を賭けて巨大なブースを構えていた。

 その中でも一際目を引いたのが、ドイツ最大のメーカーであるSiemens(シーメンス)社のブースだ。ここでは自動車、プラント、産業機器向けなど、ありとあらゆる製品・ソリューションが展示されていた。

 「Siemensのブースでは、あらゆるコーナーに『Connected to MindSphere』という表示がありました。MindSphereとは、同社が提供するクラウドベースの産業機器向けIoTプラットフォームのことです。このプラットフォームは今後、Amazon Web Services(AWS)やAzureに対応するとのことで、産業機器のIoT化におけるクラウド利用の必要性を強く感じました」

 一方、ドイツ・Beckoff社も大きなブースを構え、産業機器向けの制御PCやPLCを多数展示。その中には、AIによる分析処理も想定したIntel CPUと複数のGPUを搭載する制御用PC、Windowsベースの高性能小型産業PCなども紹介されていた。さらに米Intel社のブースでは、大型プラント全体をコントロールするエッジノードが展示されていたのをはじめ、VPU(Vision Processing Unit)「Movidius」を使った高速画像処理のデモなどが行われていた。

 「すでに装置・機器がインターネットやクラウドにつながることは当たり前になりつつあります。またエッジ処理のニーズが確実に高まっており、ハードメーカー各社もエッジで高速なデータ処理を実行する高性能産業用PCを多数展示していました。IoTは今後、収集したデータをどのように分析・解析・活用するか、業務連携させるか、AI処理をどうするかといった次の段階に進んでいるという確信を深めました」