標準仕様策定が進む電子レシート ~
経産省・NEDO実証実験報告

経済産業省と国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」の一環として、電子レシートの標準規格策定に向けた取り組みを行っている。2018年5月には、実用化に向けた実証実験も行われた。その内容と結果について、東芝テック株式会社の三部雅法氏に話を聞いた。

三部 雅法 氏

東芝テック株式会社

リテール・ソリューション事業本部

技術統括部 技術推進部 上席主幹

三部雅法氏

電子レシートの購買履歴データを活用する

 IoTが浸透するにつれ、一般消費者の行動によって生まれるさまざまなデータを収集・利用しようという動きが活発化している。そうした動きの一つとして経済産業省を中心に進められているのが「電子レシート」の標準仕様の策定作業だ。電子レシートは、誰がいつどこで何を買ったかという有用な情報が記録されている購買履歴データであり、それを活用することで新製品・新サービスの開発に役立つものと期待されている。

 しかし既存のレシート情報、すなわち購買履歴データは、事業者それぞれが個別に管理しているため、データ統合が難しい。特定の個人がどの店を回ってどんな商品を買ったのかといった情報活用ができないのが実情だ。

 そこで経済産業省は電子レシートの標準仕様を策定し、個人を起点とした購買履歴データの利活用を推進する取り組みを行っている。2017年からはNEDOの協力の下、東芝テック株式会社を委託事業者に選定し、標準データフォーマットとAPIの研究開発に着手している。

 「購買履歴データを利活用するには、標準電子レシートフォーマットを普及させていかなければなりません。しかし現状は、普及を妨げるさまざまな課題があります。特に国際標準規格として世界中の法制度、税制、商習慣の違いを吸収する必要があるため、データが大きく複雑で分かりにくいことが大きな課題です」(三部氏)

 そこで東芝テック株式会社では、日本国内向けに項目を絞り込んだ簡易版仕様書を作成するとともに、JSONデータフォーマット仕様や標準REST API仕様を策定する作業に取り組んできた。すでにほとんどの策定作業が終了し、2018年2月13日~28日に電子レシートの仕様を検証する実証実験が行われた。

電子レシートが目指す社会
電子レシートが目指す社会

実証実験を通じて標準仕様の有効性を検証

 経済産業省とNEDO、東芝テック株式会社が電子レシート実証実験の舞台として選んだのは、東京都町田市。同市に店舗を構えるコンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンター、食品スーパー、洋菓子店の協力の下に実験が行われた。

 「今回の実証実験では、個人を起点に購買履歴データを活用できる環境整備を進めることを目指しています。具体的には、消費者にスマートフォンアプリをダウンロードしてもらい、さまざまな業態の店舗が発行する標準仕様の電子レシートを収集し、APIを利用して家計簿アプリなどにつなげられることを検証しました。また、個人の許可を受けた上でマスク化された購買履歴データを提供してもらい、その活用方法を検討しました」(三部氏)

町田市で行われた実証実験の流れ
町田市で行われた実証実験の流れ

 実験で実際に電子レシートアプリを登録したのは、2,708人。そのうち約3割の815人が実際に電子レシートを受け取った。電子レシートの総数は2,085枚で、一人あたり約2.6枚の電子レシートを取得できたという。また、自身の電子レシートをみずからの判断で外部アプリに連携した数は延べ248件に達し、そのうち97%が購買履歴データとして活用するデータプールへの連携を許諾した。

 「データプールに蓄積された購買履歴データの分析は、2業態以上の店舗を利用した女性40人を対象にしました。その結果、業態別の利用頻度や会周りの動向を可視化でき、商圏・セグメント別の詳細な消費者の行動が理解できることが分かりました」(三部氏)

 また実験参加者にアンケートをしたところ、電子レシートが他のアプリと連携できることを便利だと回答した人は7割に上った。ただし、電子レシートを提供するかどうかは事業者の利用目的によると回答した人は約9割であり、購買履歴データを活用するには消費者への十分な説明が必要なことが分かったという。

 「今回の実証実験を通じ、電子レシートの購買履歴データを扱う際の標準フォーマット、蓄積された購買履歴データを他のアプリと連携する際に用いるAPIが完成しました。今後、これらの仕様を無料で公表し、標準フォーマットとAPIを普及していくことで、効率的かつ効果的にデータ利活用ができる環境を整備したいと考えています」(三部氏)