Liberaware社の狭所点検用小型ドローンプロジェクト「LAPIS for Drones」

Liberaware社は、屋内や地下トンネルなど非GPS環境の狭所空間で自律飛行可能とする小型産業用ドローンの実用化プロジェクト「LAPIS for Drones」を進めている。プロジェクトの成果として誕生した狭所点検用小型ドローン「IBIS」は、2018年度内にもリリースされる予定だ。Liberaware社の取り組みについて、同社 アプリケーション開発部 ディレクターの小川祐司氏に話を聞いた。

小川 祐司 氏

株式会社Liberaware

アプリケーション開発部

ディレクター

小川祐司氏

非GPSドローンへのニーズと課題

 遠隔操作または自動操縦により自律的に飛行する無人飛行機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)―― いわゆるドローンは、無線通信技術の発展やマルチコプター機体の性能向上によって瞬く間に実用化され、すでにさまざまな用途に利用されている。ただし、商用化されているドローンは、高精度のGPS機能によって位置情報を割り出しながら飛行するため、屋外の業務で利用するものがほとんどだ。

 しかし、ドローンの用途は屋外にとどまらない。最近は屋内での利用ニーズも増えている。例えば、大規模な倉庫内でドローンを飛ばし、商品の在庫管理や警備に利用されている事例がある。また、工場の危険な作業現場で生産装置の点検や安全確認するために、ドローンを使う試みが始まっている。さらに地下を走るトンネル内の保守点検に活用したいというニーズも広がりつつある。

 屋内・地下でドローンを飛ばす際の課題と言えるのが、GPS機能が利用できないことだ。

 「非GPSドローンでは、カメラやレーザーなどのセンサーで周囲の形状を把握し、取得した情報を基に自己位置推定と地図作成を行う『SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)』の技術を利用するという認識が一般的です。しかし、非GPS空間を飛ぶ技術はSLAMだけでなく、例えば測量機器のトータルステーションやモーションキャプチャ技術を利用するものもあります。いずれにせよ、万能の技術は存在しないのが現状です」(小川氏)

手のひらサイズの狭所点検用ドローンを開発

 こうした非GPSドローンの課題を解決するために、新しいドローンの開発に取り組んでいるのが、2016年に創業したものづくり・メーカースタートアップ企業の株式会社Liberawareだ。同社は産業用、操縦訓練用、レース用などの各種ドローンの開発を中心に事業を展開しており、ドローンの飛行に必要な技術の研究開発も行っている。

 「当社ではドローンの機体に搭載する制御基板をはじめ、高精度な位置推定を実現するSLAM、画像処理を基に障害物検出や経路のプランニングを行う技術、AI/機械学習により機体自身が考えて動作する自律制御技術などの開発に取り組んでいます」(小川氏)

 Liberaware社では、それらの独自技術を結集した実用化プロジェクト「LAPIS for Drones」を始動させ、Azure上で機体管理やデータ解析、飛行設計などを行う小型ドローンの開発に取り組んできた。その成果として誕生したのが、外形寸法15×20×4cm、重量150gという手のひらサイズの小型ドローン「IBIS」だ。

Liberaware社が開発した小型ドローン「IBIS」
Liberaware社が開発した小型ドローン「IBIS」※写真提供:Liberaware社

 「IBISは、GPSが届かない屋内環境で自律飛行できる能力を備えており、共同溝・下水道・地下鉄トンネルなどの施設点検、屋根裏や床下などの住宅診断といった狭所・暗所・複雑で危険な作業を伴う場所での利用を想定して開発したものです」(小川氏)

 2018年2月には、三菱地所などと共同で東京・丸の内エリアのオフィスビルに空調用エネルギーを供給している熱プラントを結ぶ地下トンネル内で点検作業の実証実験が行われた。また3月には、ホロラボと共同でマイクロソフトのMRデバイス「HoloLens」を利用し、音声やジェスチャーで遠隔操縦を可能とするシステムを開発している。

 ちなみにLAPISは、2018年6月に開催された「Microsoft Innovation Award 2018」で「東京エレクトロンデバイス賞」など4つのスポンサー賞を獲得。同社のドローンは、新しいIoTデバイスとしても注目度が高まっている。

丸の内熱供給/洞道の実証実験の様子
丸の内熱供給/洞道の実証実験の様子 ※写真提供:Liberaware社