理想のIoTサービスをいち早く実現する クラウドAI・IoTソリューション Microsoft Azure

理想のIOTサービスをいち早く実現する
クラウトAI・IOTソリューション
Microsoft Azure
Cloud AI ・IoT ソリューション Microsoft Azure
  1. Microsoft Azure TOP
  2. Microsoft Azureコラム
  3. IoTに必須の温度センサーとは何か。種類や活動事例を解説
2024/02/28

Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)

IoTに必須の温度センサーとは何か。種類や活動事例を解説

工場などで多く利用されているIoTセンサーの一つに、温度センサーがあります。昨今の食品工場では、衛生管理の観点からHACCPなどによる製品の適切な温度管理が義務化されており、温度センサーの利用は今後もますます増えていくことが予想されます。
本記事では、工場やオフィスでのIoTでよく利用される温度センサーとは何か、方式による使い分けや実際の活用事例、また、HACCPとは何かについて紹介します。

ネクストステップにおすすめ

ICTとIoTの違いや IoTデバイスとは?Azure CSPについてなど、
製造業IoT入門編の次にお読みいただきたい資料はこちら

IoTの概要と特徴が分かる!IoTの活用に欠かせないエッジコンピューティングも解説(IoTの理解度チェックリスト付き) e-Bookダウンロード

温度センサーとは

はじめに温度センサーの概要や2つの方式、データ通信方式について解説します。

温度センサーとは

温度センサーとは、温度による金属の抵抗値の変化や物体の放つ赤外線の量などにより、温度を数値化できるセンサーのことです。主に機器の表面温度、液体、気体の温度を測定するために利用されます。
測定したい対象物の温度域によってさまざまな種類や方式があり、用途によって使い分けられています。

IoTに用いられる温度センサーの二つの方式

IoTに用いられる温度センサーには大きく分けて二つの方式があります。

接触型

接触型は対象物に感温部を直接接触させて温度を測定する方式です。機器の表面温度や液体や気体などの流体温度を測定する場合は、主に接触型が用いられます。
同じ接触型でも測定原理によって、熱電対、測温抵抗体、サーミスタ、バイメタル式などがあり、測定温度域、要求精度によって使い分けを行います。

対象物と直接接することから、比較的精度が高く、応答性が早いという特徴があり、工場などの現場で設置されている温度センサーはほとんどが接触式です。
また、流体の腐食性などの観点から感温部との直接接触が難しい場合は、保護管と呼ばれる金属の筒を利用して、ほかの流体を媒介させて温度を測定します。例えばボイラーの排ガス温度などを測定する場合には、この方式が利用されます。

非接触型

非接触型は温度によって物体の放つ放射量が変化する赤外線を検知することにより、対象物に接触させず温度を測定する方式です。接触式では測定できない高温物体の温度測定や簡易式の体温計、熱源を検知して映像にするサーモグラフィや人感センサーなどに用いられています。

この原理を利用して温度を測定する放射温度計は、測定したい物体により放射率の調整が必要であり、高精度な測定はできないという特徴があります。一方で、数十メートル以上離れた箇所の温度も測定可能という利点もあり、工場の配管温度測定などによく利用されています。
また、非接触型の体温計に関しては感染症対策などの観点からも、非接触で情報を取得できるという点で利用が増えています。

データの通信方式に関する種類

温度センサーを用いて取得した情報を電気信号として送信する方法として、有線式と無線式があります。

有線式の場合は、Wi-Fiなど無線通信の環境構築が不要 で、断線しない限り信号が途切れることがないというメリットがありますが、センサーの数だけ配線工事が必要となりイニシャルコストが高くなります。
一方、無線式であれば、通信環境が構築できれば配線工事なども不要で、センサーの追加が容易になるため、イニシャルコストを抑えることが可能です。無線式の場合、従来であれば送受信が安定しないなどの問題がありましたが、センシング技術や通信技術の向上により、工場などでも無線式のセンサーが導入される機会が増えています。

無線式センサーを用いる場合の通信方式としては、コスト的にもっとも導入が容易で消費電力が少ないBluetooth型を利用する場合が多くあります。 ただし、Bluetoothは遠距離の通信には不向きのため、距離がある場合はゲートウェイなどの中継機器を設置する必要があります。
Bluetoothであればボタン電池式のセンサーでも電池交換なしで数年間稼働させることができるため、電源の配線工事なども不要で保守の手間も削減できます。

BluetoothがIoTにどのように利用されるのかをユースケースと合わせて詳しく紹介していますので、こちらもぜひ参照してください。
関連リンク:「IoTを支える無線通信技術の今

温度センサーはどのように社会の中で使われているか

ここからは、温度センサーの代表的な用途を紹介します。

製品の製造

製造業の現場ではあらゆる場面で温度センサーが用いられています。金属部品の熱処理、鉄鋼材料の圧延、食品、化成品の加熱、紙の乾燥、フィルムの延伸など、熱を加える工程では必ず温度センサーが用いられています。
温度センサーで 正確な温度を取得し、ガスバーナー、蒸気、電気、温水、熱媒油などにより製品温度を一定に制御することで高品質な製品を製造することが可能です。

製造業の場合、温度センサーの精度により製品品質が大きく変わるため、精度の高いセンサーが利用され、定期的にセンサーが正しく動作するための調整が 実施されています。石油精製や発電所、化学プラントなどの大型の工場では、温度センサーで取得した値を中央制御室で一元監視できるよう中央監視用のDCSやPLCと温度センサーを有線で接続して利用するのが一般的です。

輸送機械

自動車、コンベヤ、ポンプをはじめとする輸送機器には、冷却水や潤滑油の温度、ベアリングなどの駆動部の異常昇温を検知するために、接触型の温度センサーが利用されています。

回転機器の場合、駆動部の潤滑や冷却水に不具合があり、適切な冷却ができず、駆動部に摩擦熱が発生すれば、シャフトの焼き付きなどにより故障が発生する可能性があります。
これらの回転機器が停止すると、ほかの生産ラインへ与える影響が非常に大きいため、異常が発生する前にメンテナンス時期を把握できるよう、温度センサーによる軸受表面温度の傾向監視などが行われています。

実際の工場では、回転機器の電流値や各部の表面温度、圧送流体の圧力、冷却水の温度、圧力、流量、潤滑油量などさまざまな値を監視しながら保全を行うのが一般的です。

安全・保安

安全や保安の身近な例としては、天井に取り付けた温度センサーにより、監視エリア内の高温箇所を確認し、火災を予防するなどの災害対策が行われています。
これらの防災用の温度センサーは、一定規模以上の建築物では消防法などの法律でも設置が義務付けられており、定期的な検査を行う必要があります。

また、進入禁止の箇所に人が侵入すると、人の発する赤外線を検知して警報が鳴るなどのシステムにも温度センサーが用いられています。これらの技術は人の発する赤外線を検知して、室内の人数を測定したり、会議室の入退室を管理するなど、人感センサーとしてオフィスの環境改善による生産性向上 にも活用されています。
人感センサーの場合は、測定温度自体に高い精度は求められないため、一般的に非接触型のものが利用されます。

空調管理

商業施設や一般家庭、オフィスなどの空調管理には温度センサーが用いられています。特に大型の施設の場合、温度センサーを複数設置することにより、場所による温度ムラを測定し、ファンの向きを調整することで全体を同じ温度にするなどの複雑な制御が組まれています。
また、工場の場合には湿度センサーと組み合わせて作業者が熱中症にならないよう不快指数を算出しながら空調の制御が行われています。エネルギーコストの観点からも、状況に応じた適切な空調管理は今後もますます重要視されていくと考えられます。

衛生管理、感染対策

大型の商業施設などでは、顧客が入店時に顔を映すだけで瞬時に体温が測定される非接触型の温度センサーを用いて、感染対策などが行われています。入店時のアルコール消毒などと合わせて、平熱より体温の高い顧客の入店を制限することで、店内での感染症の蔓延を防止します。

また、昨今ではCO2センサーにより室内のCO2濃度を測定し、換気頻度の適正化を行うなどといった取り組みも行われています。これらと組み合わせることで、感染の蔓延リスクを多方面から低減し、顧客に安心して来店してもらうという試みが実施されています。

工場などでのエネルギーロス測定

多量の熱を利用する工場において、燃料コストは工場の生産コストの大半を占めます。高温の配管や機器の保温による放熱量の低減は、省エネ対策として非常に重要です。

これらの対策の一環として、工場全体の放熱量の大きい箇所を特定するために、非接触型の温度センサーにより赤外線量を測定し可視化できるサーモグラフィが用いられています。
サーモグラフィを用いることで、距離の離れた箇所でも高温箇所が視覚的に判別でき、外気温との差を元にした放熱量を計算することで、投資採算性なども容易に算出できるようになります。
大型の工場では、高温流体の流れる配管の保温劣化状況 などを判定するために、定期的に放熱量の診断を実施しています。

天気予報での気温測定

天気予報などで記載されている気温は気象庁が全国に設置するアメダスの温度センサーにより測定されています。
アメダスの温度センサーは外部からの影響を受けないよう、周囲を芝生にし、ファンによる適切な通風を行いながら1.5mの高さで測定が行われています。このため、天気予報で記載されている温度と比較すると、実際の街中の温度はコンクリートの蓄熱やアスファルトからの照り返しを含めると、一般的に高くなるといわれています。

IoT接続した温度センサーの活用例

温度センサー自体は日常でもさまざまな用途で利用されていますが、ここでは温度センサーで取得した値をインターネット経由で管理できる「IoT温度センサー」の活用事例を紹介します。

空調管理

空調管理を行う場合、大気中の温度を測定するために温度センサーは必須です。

特に商業施設や工場において、全体で使用する電力量のうち、空調機器の占める割合が非常に大きいため、空調機器の稼働率改善によるコスト低減は重要な施策となります。
そのため、複数の温度センサーで取得した大気の温度情報とほかのセンサーで取得した人や発熱機器の位置情報を空調システムとリンクさせ、効率的に暖気や冷気を行き渡らせるようにしたり、利用者のいない空間の 不要な箇所の空調機器を停止させるなど、空調システム全体を一元的に監視、制御するといったシステムが導入されています。

また、温度だけでなく各機器の使用電力などを一元管理し、全体を見える化することで、既存の設備同士での効率比較が実施できるようになり、高効率な設備への入れ替えなどの省エネ対策の検討が可能となります。

上記のような空調やCO2、湿度や光度などのあらゆる情報が見える化され、最適化されたビルや住宅は「スマートビルディング」や「スマートハウス」とも呼ばれています。エネルギー効率化の観点から、今後もますますシステムの導入が進んでいくと考えられます。

冷蔵庫の温度管理

食中毒予防の観点から厳しい衛生管理や品質管理が求められる食品工場では、冷蔵庫の温度管理や定期的な記録が義務化されています。
温度センサーとIoTを組み合わせ、取得したデータを自動的にトレンドグラフ化できるソフトウェアを導入すれば、これまで人が現場にて目視で行ってきた確認作業を遠隔化し 、作業コストを大幅に低減することができます。

また、故障などにより冷蔵庫の温度に異常が発生した場合、アラームを発報する 制御を組むことで異常発生時に即座に対応できるようになり、食品の廃棄ロスなどを削減できます。

工場における製品温度の制御

製品の加熱工程がある工場では、必ず温度センサーが設置されています。また、化学反応などにより製品が過昇温した場合には即座に冷却に切り替える、といった複雑な制御を実施する際にも、温度センサーは必須になります。

このような複雑な制御では、DCS (Distributed Control System)「分散制御システム」と呼ばれる中央監視システムを使用する場合が大半です。昨今ではDCSとタブレットなどの通信機器を接続することにより、遠隔からバルブの制御などが行えるシステムが利用されています。
これにより、従来であれば中央制御室の人と現場の人とのトランシーバーによるやり取りが必要であったものが不要となり、人員コスト削減につながります。

人感センサーによる監視カメラへの応用

農業などでの獣害対策や住居への不法侵入対策として、夜中でも検知が可能なサーモカメラが利用されています。

例えば獣害対策の場合、夜間に熱源となる動物が侵入するとアラームを鳴らすなどの制御を組むことで、無人、遠隔での獣害対策を行えます。
また、サーモカメラを利用することで熱源のみで人の有無を検知できるようになり、従来の監視カメラと比較して、住民のプライバシー保護などにも役立ちます。

温度センサーによるスマート農業

これまでは天気や気候によって生産量や品種が変動することの多かった農業の分野ですが、IoT技術により、農産物を特定の条件下で安定的に生産できるようにする試みが増えています。
これらは「スマート農業」と呼ばれており、温度センサーによるビニールハウスや土壌の温度監視などが行われています。

例えば、温度システムと空調システムを連動させ、過昇温が発生しやすい昼間は一定値を超えたら循環ファンや冷却設備を稼働させたり、温度が低下しやすい夜間は一定値を下回ったら自動で暖房をオンにしたりすることにより、ハウスの温度を一定に保つことが可能です。
また、高温・低温時の異常警報や天窓の開閉なども自動で行うことで、人員の削減にもつながります。

スマート農業は、従来は熟練者の勘と経験に頼ることもあった農業の供給安定性向上や生産性向上につながるとして、今後も拡大が期待されています。

無線式体温計による健康管理

健康管理として重要な体温測定ですが、体温計に通信機能を持たせることにより、測定した値を自動的にスマートフォンに送信し、連携アプリで管理を行うというサービスが展開されています。
また、通信機能付きの体重計などと組み合わせることで、日々の健康管理を一元管理でき、健康管理をスマート化することができます。

アプリで記録した結果はクラウド上に保存され、どこでも確認が可能なため、遠隔医療への活用や離れた高齢の家族の見守りなど、さまざまな利用用途への拡大が期待できます。

衛星による地表面温度監視

人工衛星に非接触型の温度センサーを搭載することで、地球上の地表面の温度分布を測定することができます。これらのデータは一般公開されており、農業分野や火山活動の監視、林野火災発生のリスク想定などに活用できます。

また、気候変動の推移や都市部のヒートアイランド現象の分析など、研究分野にも活用されています。これらの技術は「ものを触らず調べる」技術として、「リモートセンシング技術」と呼ばれています。

温度センサーとHACCP

食品工場にて温度センサーの重要度が増す理由の一つにHACCPがあります。ここではHACCPとは何かについて紹介します。

HACCP(ハサップ)とは

HACCP(ハサップ)とは Hazard Analysis and Critical Control Pointの略で、食中毒を防止するための衛生管理に関する、国際的な管理手法のことをいいます。
HACCPでは食品の製造・加工工程において、微生物の混入や繁殖リスクのある個所を生産工程ごとに分析し、その対策を検討、実施することで食中毒を未然に防止することを目的としています。

HACCPには準拠すべきさまざまなガイトラインが示されていますが、その一つに食品の適切な温度管理があります。
飲食店、スーパーマーケット、食品工場など、さまざまな設備において適切な温度管理は重要な要素とされています。
令和3年6月より厚生労働省により HACCPが施行されており、事業者は温度を記録・保管する必要があるほか、適正に管理されているかをモニタリングするよう義務化されています。
温度センサーを使用して、食品の温度を定期的に監視し、温度が適切な範囲に保たれていることを確認することで、HACCPの要件を満たすことができます。

これらの理由から、食品工場における温度センサーの重要性はますます増していくと考えられます。

HACCP対応:IoT温度センサー導入で実現できること

HACCPへの対応により作業者の検査や記録項目が増加し、それにより作業工程が増えることで、生産効率の低下が懸念されています。
そこで、現在使用している温度センサーをインターネット通信が可能なIoT温度センサーに変更し、データの蓄積やグラフ化を自動化し、クラウド上で管理することにより、人による記録作業の自動化やヒューマンエラーによる記録ミスを軽減できます。

また、異常が発生した際も、人の手による定期的な記録では復旧を優先させるため正確な時間を特定することが難しい場合もありますが、 IoT温度センサーを利用することで発生時間を特定できるようになり、異常発生の要因分析も容易になります。

いざというときのフードロスの削減に寄与

IoT温度センサーや非常用発電機、蓄電池などを組み合わせることで通信の切断、停電・電源喪失時にも一定期間温度情報を保管し、庫内温度を維持するようなシステムの構築も可能となります。
このようなシステムを工場の新設時から導入することで、設備に異常が発生した際に保管している在庫が全て廃棄になるという事態を防止でき、いざというときのフードロス対策としても活用できます。

必要かつ無駄のないIoTセンシング技術を導入するなら

IoT温度センサーの導入を成功させるには、導入によって解決したい課題を明確にし、過剰仕様にならないよう注意しながら、適切な機器やパッケージ化されたソフトウェアを利用し、コストを抑えながらスモールスタートさせることが重要です。

東京エレクトロンデバイスの 「IoT INSIGHT CaaS」は月額3,000円からスモールスタートが可能です。導入後に開発が必要な場合は、別途専門のエンジニアが対応することも可能です。
IoT化を推進したいがどんなことができるのかわからない、最小限の投資で試してみたいという方は、ぜひ東京エレクトロンデバイスにご相談ください。

ネクストステップにおすすめ

ICTとIoTの違いや IoTデバイスとは?Azure CSPについてなど、
製造業IoT入門編の次にお読みいただきたい資料はこちら

IoTの概要と特徴が分かる!IoTの活用に欠かせないエッジコンピューティングも解説(IoTの理解度チェックリスト付き) e-Bookダウンロード