Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)
エッジコンピューティングとは?なぜIoT・AI時代に不可欠とされるのか、そのメリットを解説
近年、あらゆるものをインターネットに接続するIoTが普及し、私たちの身近に存在するようになってきました。そんななか、「エッジコンピューティング」という言葉を聞くようになった方は多いのではないでしょうか。エッジコンピューティングは、IoTやAIを最大限活用する上で欠かせない技術となってきています。
今回は、エッジコンピューティングの概要から必要とされる理由、そのメリットについて解説します。
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エッジコンピューティングとは?
エッジコンピューティングはこれからのIoT・AI時代になくてはならない技術の一つです。しかし、エッジコンピューティングが何か分からないという方も多いかもしれません。ここでは、エッジコンピューティングの基礎について解説していきます。
データ発生箇所でコンピューティング処理をすること
エッジコンピューティングの「エッジ」とは、「データの収集・活用における端(デバイス)」を意味します。製造業においては現場に置かれたIoT機器などが該当します。つまり、実際にデータが発生する現場でコンピューティング処理を行うことがエッジコンピューティングとなります。
従来は収集したデータをクラウドに集約してコンピューティング処理を行っていましたが、IoTやAIの普及に伴ってエッジコンピューティングの必要性が高まってきました。詳細については、後ほど詳しく見ていきましょう。
なお、IoTについて詳しく知りたい方は「IoTとは?モノとインターネットの全体像や活用シーンを分かりやすく解説」で詳しく解説していますので、こちらをご参照ください。また、「IoTデバイス」については「IoTデバイスとは?種類や活用事例を分かりやすく解説」をご参照ください。
クラウドコンピューティングとの違い
エッジコンピューティングと並んで聞くことの多い単語として「クラウドコンピューティング」が挙げられます。クラウドコンピューティング(クラウド)は、インターネットにデータやリソースを配置し、ネットワークを介してサービスを利用する形態です。データを処理する場所がクラウドかエッジ(現場)か、が2つの違いです。
「クラウドコンピューティング」と対比される「オンプレミス」については、「クラウドはまだ早い?オンプレミスとの違い、メリットとデメリット、エッジコンピューティングとの関連を徹底解説」をご参照ください。
エッジコンピューティングが必要な理由
エッジコンピューティングが注目されるようになった背景の一つとして、先程も述べたようにIoTやAIの普及が挙げられます。高速大容量の移動通信システム5Gの登場や、小型機器の製造コストの低下などによって、IoT化が進みAIもさまざまな分野で活用が進んでいます。しかし活用が増えるにつれてさまざまな課題も指摘されるようになりました。
エッジコンピューティングは、クラウドのリソースを使って作成した処理モデルをエッジで実行するしくみです。このしくみによってIoTの運用における課題を解決します。
ここからは、エッジコンピューティングが求められている理由をひとつずつ見ていきましょう。
リアルタイム性が求められてきている
クラウドへのデータ転送には少なからず時間がかかるため、遅延が許されない場面では利用できません。たとえば、車の自動運転では、歩行者や道路状況などのデータを取得し、瞬時に処理しなければ事故に繋がります。製造現場においても、製造ラインの機器制御では低遅延かつリアルタイムなデータ処理が求められることが多いでしょう。近年、工場の機器や生産ラインなどをネットワークに接続して生産性の向上などを図る「スマート工場」が注目されていますが、スマート工場で利用されるAI処理に関しても低遅延かつリアルタイムな反応が求められます。このような課題をクリアするためにも、エッジコンピューティングが必要とされているのです。
データ量が膨大になってきている
IoTの発展によってあらゆるデータの取得が可能になり、膨大なデータ量を取り扱うことが多くなってきています。たとえば工場内の機器一つひとつにセンサーを設置し、様々なデータを取得して状態を把握するといったことが可能となってきているのです。
しかし、収集したデータの中に不要なデータがあれば、無駄なデータのための通信コストやストレージのコストがかさむことになります。エッジでデータの選別をできれば、こうした問題に対応することができます。
エッジコンピューティングのメリット、クラウドとの連携でできること
エッジコンピューティングのメリットは「リアルタイム性」「コスト削減」そして「情報漏洩リスクの軽減」の3つが挙げられます。先述のエッジコンピューティングが必要な理由と重なる部分はありますが、もう一度整理してみましょう。
現地でのより迅速なデータ処理(リアルタイム性)
エッジコンピューティングはデータが発生する現地の端末で処理を行うため、クラウドと比べて低遅延のデータ処理が可能となります。エッジコンピューティングが必要とされる理由でも解説したとおり、リアルタイム性が求められる場面でエッジコンピューティングは非常に有効です。5Gの登場などもあって通信環境は発展し続けていますが、遅延を最小限に抑えるためにはエッジ付近でのデータ処理が欠かせません。リアルタイム性を確保できる点は、エッジコンピューティングのメリットの一つとなります。
コストの削減
スマート工場などを実現する場合、処理するデータ量は膨大ですが、すべてのデータを転送すると通信コストやストレージコストも無視できないものになります。エッジコンピューティングはエッジ側でデータを処理し、必要最小限のデータのみをクラウド上に転送できるため、コストの削減が可能です。
情報漏洩リスクの軽減
IoTではインターネットを介したクラウドとの情報の送受信が必要です。インターネットへの送信頻度が多くなればなるほど、情報漏洩のリスクは高まります。もちろん、送受信を安全に行うための技術的な手段はありますしむやみに恐れる必要はありませんが、データ送信頻度を抑えたいという要求はあります。現場で処理を行うエッジコンピューティングなら、工場外へ送信することによる情報漏洩リスクの軽減が期待できます。
まとめ
エッジコンピューティングは、現場などのデータ発生箇所(エッジ側)でコンピューティング処理をするものであり、IoT・AIの運用に欠かせない技術です。製造業においては、スマート工場などの推進のために注目されているしくみであり、エッジコンピューティングを用いることで多くのメリットが得られます。
現場にIoTを導入することも多くなっていると思いますが、IoTを活用する際にはエッジコンピューティングについての理解も重要となるでしょう。IoT・AIとあわせて、エッジコンピューティングを活用してみてはいかがでしょうか。
なお、IoT導入では、IoTデバイス(エッジデバイス)、クラウドの理解も欠かせません。IoTの基礎知識として、ぜひ確認しておきましょう。