Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)
ビッグデータ×AIの活用事例9選を紹介!メリット、利用する際のポイントもあわせて解説
ビッグデータは現代のビジネスにおいて欠かせない存在となっています。膨大なデータを分析し、活用することで、企業は競争力を高め、効率的な意思決定を行うことができます。本記事では、ビッグデータの概要やメリット、活用事例について詳しく解説します。
ビッグデータとは
ビッグデータとは、従来のデータ処理技術では扱いきれないほど膨大で複雑なデータ群を指します。例えば、スマート家電の使用状況や、ウェアラブルデバイスの健康データ、オンラインショッピングサイトの購買履歴や閲覧履歴などがビッグデータとなり得ます。
これらのビッグデータはIoTデバイスやソーシャルメディア、センサーなど、さまざまなソースから生成され、ビッグデータを分析することで、企業や組織にとって価値ある取り組みを行える可能性を秘めています。
IoTデバイスについては、「IoTデバイスとは?種類や活用事例を分かりやすく解説」をご参照ください。
ビッグデータを利用した製造業の事例3選
ビッグデータを活用した事例は多岐にわたりますが、ここでは製造業の3つの事例を紹介します。
工場のIoT化による製造プロセスの最適化
大手空調機メーカーA社は、IoTを活用したビッグデータ戦略で製造プロセスを最適化しました。工場の全設備をネットワーク化し、リアルタイムデータ収集基盤を構築。センサーで製造現場データを収集し、クラウドで統合を行い、データを可視化し、AIを使った分析も行いました。このデータは生産管理や品質管理に活用しています。この4段階のサイクルにより、製造プロセスの最適化を実現しました。
このようにIoTとビッグデータの融合が、効率性向上と品質管理の精度アップをもたらしています。
IoTとビッグデータの融合については、「IoTとビッグデータ、AIの関係とは?データ活用のためのポイントや成功事例を徹底解説」をご参照ください。
AIを活用した需要予測による在庫の適正化
大手酒造メーカーB社は、ビッグデータとAIを活用した革新的な需要予測システムを2023年7月から本格運用しています。このAIシステムは、商品発売の約16週間前から予測を開始し、受注・販売データを随時反映しながら出荷量を予測します。人手のみの予測と比較して約20%の精度向上を達成し、企業の生産効率と在庫管理を大幅に改善しました。当初は人間の予測に劣っていたAIも、商品情報や過去の販売実績などのビッグデータを学習することで、徐々に精度を向上させています。
工場のデジタル化とスマートファクトリー化の推進
部品メーカーC社は、ビッグデータとAI技術を活用して製造プロセスの効率化と品質向上を実現しています。同社は外観検査にAIカメラ検査システムを導入し、作業者を半減させることに成功。さらに、コスト削減と柔軟性向上のため、自社開発システムへの移行を進めています。
また、100台以上の工場設備の稼働状況をデータ化し、生産工程の無駄や故障の予兆を分析。これにより、工場のデジタル化とスマートファクトリー化を推進しています。このような取り組みは、中小製造業におけるビッグデータとAI活用の好例であり、生産性向上と品質管理の両立を示しています。
「AI時代のデータ活用基盤『Microsoft Fabric』」もぜひご覧ください
ビッグデータを利用した小売業の事例3選
次にビッグデータを利用した小売業の事例3つを紹介します。
消費者の購買行動をAIで分析した結果、売上15~20%アップ
大手飲料メーカーD社は、ビッグデータ活用によって効果的なマーケティング戦略を展開しました。消費者の購買データに加え、気象データ、広告アクセスデータ、Google検索結果などの多様なデータソースを統合し、AIも利用することによって、購買行動に関する深い分析結果を得ることに成功しました。
同社は、従来の分散したデータ管理から脱却し、マーケットアナリストの導入やアナリティクスパッケージの活用により、データ分析環境を大幅に改善。小売店とのデータ共有も可能になり、より効果的な販売戦略の立案が可能となりました。
このビッグデータ基盤は売上シミュレーションにも活用され、自社データと外部データの統合分析により売上増加を実現しています。
利用客の行動分析を行い、顧客体験を最適化
大手ドラッグストアE社は、ビッグデータを活用して顧客体験の最適化と差別化を実現した好例です。ドラッグストア業界の差別化が難しい中、同社は顧客の導線分析に注目しました。
2020年12月にオープンした東京新宿三丁目店では、顧客行動の詳細な分析結果を基に、4階建ての店舗レイアウトを最適化。各フロアの商品配置は、顧客の導線を考慮して戦略的に決定されました。
さらに、「Amazon Hubロッカー」の設置など、来店を促す工夫も導入。これにより、実店舗での顧客行動データをさらに収集し、商品配置の効果を継続的に分析・改善するサイクルを確立しました。
このようにデータドリブンな意思決定により、顧客ニーズに合わせた柔軟な店舗運営が可能となり、競争力の向上につながっています。
ビッグデータを用いた効果的なマーケティングと効率的な在庫管理を実現
大手レンタルF社は、自社のアプリをリニューアルし、顧客データの収集と分析を強化しました。このアプローチにより、顧客を売上貢献度や趣味に基づいて分類し、ターゲットマーケティングを実現しています。分類された顧客層に対し、クーポンやメールなどを用いて効果的にアプローチすることで、パーソナライズされたマーケティングを展開しています。
さらに、顧客データを基に店舗の在庫を効率的に管理し、データに基づいた需要予測により仕入れ数の適正化も実現しています。
ビッグデータを活用した金融業の事例3選
最後にビッグデータを活用した金融業の事例3選を紹介します。
ビッグデータを活用して不正取引の摘発を強化
国の証券監視機関G委員会は、不正取引の摘発強化にビッグデータとAIを活用しており、SNSなどのインターネット上の書き込みを分析し、通常とは異なる動きを示す銘柄を特定・調査しています。この手法により、従来の株価動向予測や顧客支援だけでなく、金融取引における不正行為の検知にもビッグデータが重要な役割を果たしています。委員会はこのアプローチを通じて、より効果的かつ効率的な市場監視を実現し、金融市場の健全性と透明性の向上に貢献しています
顧客へのパーソナライズしたサービス提供と業務効率化を実現
地方銀行H行は、ビッグデータとAIを活用して、顧客の購買履歴や属性情報などの多様なデータを分析し、AIを用いて各金融商品の購買確率を予測しています。
この目的のために開発された専用システムは、試行運用期間中に既に効果を示しており、特に資産運用提案の場面で、顧客のニーズと特性に合致した商品を的確に提案することを可能にしました。
結果として、同行は顧客満足度の向上と同時に、営業活動の効率化を達成しています。この事例は、金融機関におけるビッグデータとAI活用が、パーソナライズされたサービス提供と業務効率化の両立をもたらすことを示しています。
潜在顧客の発見や成約率アップの実現
地方銀行I行は、ビッグデータ活用の先駆者として、その範囲をマーケティングから潜在顧客の発見にまで拡大しています。同行は当初、激しい銀行間競争に勝ち残るためのマーケティング強化と、データ分析業務の効率化という課題に直面していました。これらの課題に対応するため、同行はAIを活用した基盤を導入しました。この新しいシステムにより、既存の申し込み率を維持しつつ、新たな顧客層の開拓に成功。結果として、成約率の向上を実現しています。
このようにビッグデータを活用することで、従来のマーケティング手法では見逃されていた潜在顧客の発見や、より効果的な営業活動の実現が可能となり、銀行業務の革新につながっています。
ビッグデータを活用するメリット
ビッグデータの活用は、企業や組織に多くのメリットをもたらします。以下では、主要な3つのメリットについて詳しく解説します。
正確な意思決定につながる
ビッグデータの活用は、企業の意思決定プロセスをより正確な方向に導くでしょう。膨大なデータを分析することで、市場動向や顧客行動、業務効率などに関する深い分析結果が得られます。これにより、直感や経験だけでなく、客観的なデータに基づいた施策の立案・実行が可能です。
また、リアルタイムデータを活用することで、迅速かつ柔軟な意思決定が可能になります。結果として、リスクの低減や機会の最大化につながり、企業の競争力向上に貢献します。
顧客理解の向上につながる
ビッグデータの分析を通じて、企業は顧客のニーズや行動パターンをより深く理解することができます。SNSデータ、購買履歴、ウェブサイトの閲覧履歴など、多様なデータソースを統合・分析することで、顧客セグメンテーションの精度が向上し、より精緻なマーケティング戦略の立案が可能になります。これにより、効果的なアプローチも可能となるため、顧客満足度の向上や新規顧客の獲得、既存顧客の維持につながります。
効率化とコスト削減につながる
ビッグデータの活用は、組織の効率化とコスト削減に大きく寄与します。これは、データ分析によって業務プロセスの最適化が可能になるためです。まず、膨大なデータから業務の非効率な部分や無駄を特定することができます。これにより、リソースの適切な配分や作業手順の改善が可能になり、全体的な生産性が向上します。
さらに、予測分析を用いることで、需要予測の精度が高まり、在庫管理や生産計画の最適化につながります。これは過剰在庫や機会損失を減少させ、直接的なコスト削減をもたらすでしょう。また、設備やシステムの稼働データを分析することで、予防保全が可能になり、突発的な故障や停止時間を減少させることができます。これにより、保守コストの低減と生産性の向上につながります。
このように、ビッグデータは組織全体の可視化と最適化を促進し、効率的な資源配分を可能にします。結果として、無駄の削減、生産性の向上、リスクの低減が実現され、総合的な効率化とコスト削減につながります。
ビッグデータを利用する際のポイント
ビッグデータを効果的に活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。以下では、その中でも特に重要な4つのポイントについて解説します。
データ活用の目的を理解する
ビッグデータを活用する際、最も重要なのは明確な目的を持つことです。単にデータを収集・分析するだけでは、有効な結果は得られません。企業や組織が直面している課題や達成したい目標を明確にし、それに基づいてデータ活用の計画を立てることが重要です。例えば、顧客満足度の向上、業務効率化、新製品開発など、具体的な目標を設定することで、必要なデータの種類や分析手法が明確になります。
データの漏えいなどがないようにセキュリティを強化する
データ漏えいは企業の信頼性を損なう深刻な問題となります。そのため、データの暗号化、アクセス制御の厳格化、ネットワークセキュリティの強化が不可欠です。
また、従業員への教育や、定期的なセキュリティ監査の実施も重要です。クラウドサービスを利用する場合は、プロバイダのセキュリティ対策も十分に確認する必要があります。さらに、法規制に準拠したデータ管理や、インシデント対応計画の策定も欠かせません。
以上のようにセキュリティを多層的に構築し、常に最新の脅威に対応することで、安心してビッグデータを活用できるようになるでしょう。
セキュリティを強化するにはゼロトラストやSASEなどの理解が必要です。「SASEとゼロトラストの違いとは?SASEの仕組みやメリット、導入の注意点について解説」をご参照ください。
AIを利用する
ビッグデータの活用においては、AI(人工知能)技術の利用が不可欠です。機械学習やディープラーニングなどのAI技術を用いることで、膨大なデータから有意義なパターンや深い分析結果を抽出することができます。例えば、自然言語処理技術を用いた顧客レビューの感情分析や、画像認識技術を用いた不良品検出など、AIはビッグデータ活用の幅を大きく広げています。ただし、AI技術の導入には専門知識が必要なため、社内での人材育成や外部専門家との連携が重要になります。
専門家に相談する
ビッグデータの活用には、データサイエンスやIT技術に関する専門知識が必要です。多くの企業では、これらの専門知識を持つ人材が不足しているのが現状です。そのため、外部の専門家やコンサルタントに相談することが効果的です。専門家は、データ収集・分析の方法論だけでなく、業界特有の課題やトレンドにも精通しているため、より実践的なアドバイスを提供できます。また、社内のデータサイエンティスト育成のサポートや、データガバナンスの構築支援など、長期的な視点でのサポートも期待できます。
ビッグデータを活用して企業の競争力を強化しよう
ビッグデータは、現代のビジネスに革命をもたらす重要な要素となっています。ビッグデータを効果的に活用することで、企業は競争力を高め、イノベーションを加速させることができます。しかし、その一方で、データの適切な管理やプライバシー保護など、克服すべき課題も存在します。これらの課題に適切に対処しながら、ビッグデータの可能性を最大限に引き出すことが、今後のビジネス成功の鍵となるでしょう。
また、ビッグデータの活用にはAI技術の利用が欠かせません。東京エレクトロンデバイスでは、データ活用をAIがアシストするプラットフォーム「Microsoft Fabric」の利用をお勧めします。Microsoft Fabricは、マイクロソフトが提供するSaaS型データ活用プラットフォームで、現場のユーザーがデータ活用を容易に行える環境を実現します。ビッグデータ活用には不可欠なツールですので、ぜひ、一度ご覧ください。
Azure Fabric、Microsoft Fabricに関するFAQ:
Q. ビッグデータ活用に適した業種はありますか?
全ての業種でビッグデータ活用の可能性がありますが、特に小売、製造、金融分野での活用が進んでいます。
Q. 中小企業でもビッグデータを活用できますか?
はい、クラウドサービスの活用により、中小企業でも比較的低コストでビッグデータ活用を始められます。
Q. ビッグデータ活用に必要なスキルセットは何ですか?
データ分析スキル、プログラミングスキル、ビジネス理解力が重要です。ただし、外部パートナーとの連携で補完することも可能です。
Q. ビッグデータ活用のリスクにはどのようなものがありますか?
データセキュリティ、プライバシー侵害、誤った分析結果による意思決定ミスなどがあります。適切な管理と運用が重要です。