Microsoft Azureコラム
Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)
CWPPとは?クラウドワークロード保護の必須知識と実践戦略
クラウド環境のセキュリティ強化に不可欠なCWPP(Cloud Workload Protection Platform)。本記事では、CWPPの基本概念から具体的な導入ステップ、最新のトレンドまでを解説します。デジタル時代のビジネスを守るための必須知識として、CWPPの重要性と活用法をマスターしましょう。製造業での実践例や、AI活用の未来展望にも触れています。

CWPPの基本概念と重要性
CWPPは、クラウド環境で実行されるワークロード(仮想マシン、コンテナ、サーバーレス関数など)を保護するための専門的なセキュリティソリューションです。CWPPは、ワークロードの可視化、脆弱性管理、コンプライアンス確保、脅威検知と対応など、クラウドワークロード特有のセキュリティニーズに焦点を当てた包括的な保護機能を提供します。近年のデジタルトランスフォーメーションの加速に伴い、多くの企業がクラウドサービスを採用しており、CWPPの重要性はより一層高まっています。
ワークロード、クラウドワークロードとは
ビジネスにおける「ワークロード」とは、企業の日々の業務や運営に必要な全ての処理や作業を指します。例えば、顧客管理、財務処理、在庫管理、Eコマースサイトの運営などが含まれます。
従来、これらのワークロードは自社で管理するサーバーやシステム(オンプレミス)で処理されてきました。現在では、テクノロジーの進化と共に、多くの企業がクラウドサービスを活用するようになり、この流れの中で「クラウドワークロード」という概念が生まれました。
クラウドワークロードの具体例:
- ストリーミングサービス:動画コンテンツの配信、ユーザーの視聴履歴分析、レコメンデーション生成など、大規模なデータ処理と配信を行う処理
- ビッグデータ分析: 気象データの分析や株式市場の予測など、大量のデータを処理し、有意義な情報を抽出する処理
- 機械学習・AI: 自然言語処理や画像認識などの AI モデルの訓練と推論処理
- IoT(Internet of Things): 多数のセンサーやデバイスからデータを収集し、リアルタイムで分析する処理
- バックエンドサービス: モバイルアプリケーションのバックエンド処理や、マイクロサービスアーキテクチャにおける各サービスの実行
CWPPの登場背景
CWPP登場の背景は大きく2つあります。
クラウドワークロードの多様化と複雑化
クラウドサービスが活発に利用されるとともに、多様なクラウドワークロードが生まれた結果、これらの環境や処理は複雑になってきました。仮想マシン、コンテナ、サーバーレス関数など、さまざまな形態のワークロードが混在しており、それぞれが固有のセキュリティ要件を持っている状況です。このような多様なワークロードを一元的に管理、保護する必要性が高まってきました。
従来のセキュリティアプローチの限界
従来のセキュリティアプローチは、主に静的で予測可能な環境を前提としていました。しかし、クラウド環境は動的で、リソースが頻繁に作成、変更、削除されます。このような動的な環境下では、従来の固定的なセキュリティ設定では不十分であり、環境の変化に即座に適応できるCWPPが必要となります。
CWPPとEDR(Endpoint Detection and Response)の違い
CWPPとEDRは、両者ともにセキュリティを強化するツールですが、その焦点は異なります。EDRは主に従来型のエンドポイント(PCやサーバーなど)を対象としているのに対し、CWPPはクラウド特有の環境やワークロードを保護します。
例えば、Kubernetes環境において、EDRはコンテナホストのOSレベルでの保護を提供しますが、個々のコンテナ内部やコンテナ間の通信を詳細に監視し保護することは困難です。一方、CWPPはKubernetes固有の脅威を検知し、コンテナレベルでのセキュリティを提供できます。
このように、CWPPはクラウドネイティブな環境に特化した保護を提供することで、EDRを補完し、より包括的なセキュリティ体制を実現します。
CWPPの主要機能
クラウドワークロード保護プラットフォーム(CWPP)は、クラウド環境のセキュリティを包括的に管理するための多様な機能を提供します。CWPPが提供する主要な機能について説明します。

脆弱性管理
CWPPは、クラウド環境内の脆弱性を継続的にスキャンし、管理する機能を提供します。これには、OSレベルの脆弱性だけでなく、アプリケーションレベルやクラウド設定の脆弱性も含まれます。主な機能には以下が含まれます。
- 継続的な脆弱性スキャン:定期的に環境全体をスキャンし、新たな脆弱性を即座に特定します。
- 優先順位付け:発見された脆弱性を重大度や影響範囲に基づいて自動的に優先順位付けします。
- 修正ガイダンス:各脆弱性に対する具体的な対応方法を提供します。
このような包括的な脆弱性管理により、開発チームは迅速かつ効率的にセキュリティ問題に対処できます。
コンプライアンス監視
CWPPは、組織のクラウド環境が各種規制やセキュリティ基準に準拠しているかを継続的に監視し、評価します。この機能により、コンプライアンス要件の遵守を効率的に管理できます。主な機能には以下が含まれます。
- 自動コンプライアンスチェック:設定されたポリシーに基づき、クラウドリソースのコンプライアンス状態を自動的にチェックします。
- レポート生成:コンプライアンスの状況を詳細に示すレポートを自動生成します。
- 是正措置の提案:非準拠項目に対する具体的な改善策を提示します。
これらの機能により、組織は常に最新の規制要件に準拠した状態を維持し、コンプライアンス関連のリスクを大幅に軽減することができます。
ネットワークセグメンテーション
CWPPは、クラウド環境内のネットワークトラフィックを詳細に制御するためのマイクロセグメンテーション機能を提供します。これにより、攻撃者の横方向の移動を防ぎ、被害の拡大を最小限に抑えることができます。主な機能は以下を含みます。
- マイクロセグメンテーションの実装:各アプリケーションコンポーネントを個別のセグメントに分離します。
- 動的なポリシー適用: 新しいワークロードに対して自動的に適切なセキュリティポリシーを適用します。
- 異常な通信の検知:セグメント間の通信パターンを継続的に監視し、異常を検知します。
このようなきめ細かいネットワーク制御により、攻撃者が一つのコンポーネントを侵害しても、他のコンポーネントへのアクセスが制限され、被害の拡大を防ぐことができます。
アプリケーション制御
CWPPは、クラウド環境で実行されるアプリケーションを監視し、制御する機能を提供します。これにより、不正なアプリケーションの実行を防ぎ、アプリケーションレベルでのセキュリティを強化します。主な機能には以下が含まれます。
- アプリケーションホワイトリスト:承認されたアプリケーションのみが実行できるよう制御します。
- 動作監視:実行中のアプリケーションの振る舞いを分析し、異常を検知します。
- ポリシー適用:アプリケーションの使用に関する組織のポリシーを強制します。
この高度なアプリケーション制御により、組織は承認されたアプリケーションのみの実行を保証し、マルウェアや不正なソフトウェアによるリスクを大幅に低減できます。
脅威検知と対応
CWPPは、クラウド環境における脅威を検知し、迅速に対応するための機能を提供します。これには、マルウェア対策から高度な脅威の検出まで幅広い保護が含まれます。主な機能は以下の通りです。
- リアルタイム脅威検知:異常な活動やマルウェアの存在をリアルタイムで検出します。
- 自動対応:検出された脅威に対して、事前に定義された対応策を自動的に実行します。
- 脅威インテリジェンス統合:最新の脅威情報を活用し、未知の脅威にも対応します。
このような多層的な脅威対策により、組織はより迅速かつ効果的にセキュリティインシデントに対応し、潜在的な被害を最小限に抑えることができます。
ログ管理と分析
CWPPは、クラウド環境全体のログを集中管理し、高度な分析を行う機能を提供します。これにより、セキュリティイベントの詳細な分析や、コンプライアンス目的のログ保持が可能になります。主な機能には以下が含まれます。
- 集中ログ収集:クラウドリソース全体からログを自動的に収集し、一元管理します。
- 高度な分析:機械学習などを用いて、ログデータから異常や潜在的な脅威を検出します。
- カスタムアラート:特定のイベントやパターンに基づいて、カスタマイズされたアラートを設定できます。
この包括的なログ管理と分析により、組織はセキュリティイベントの詳細な把握と長期的なトレンド分析が可能となり、プロアクティブなセキュリティ戦略の策定に役立ちます。
統合管理ダッシュボード
CWPPは、上記の全機能を統合的に管理・可視化するためのダッシュボードを提供します。これにより、組織全体のクラウドセキュリティ状況を一目で把握し、効率的な管理が可能になります。主な特徴は以下の通りです。
- 統合ビュー:全てのセキュリティ機能の状態を一つの画面で表示します。
- リアルタイムアラート:重要なセキュリティイベントをリアルタイムで通知します。
- カスタマイズ可能なレポート:組織のニーズに合わせたセキュリティレポートを生成できます。
この統合管理ダッシュボードにより、セキュリティチームは組織全体のセキュリティ状況を効率的に把握し、迅速な意思決定と対応が可能となります。
CNAPPにおけるCWPPの位置づけ
ここでCWPPを語る上では欠かせないCNAPP(Cloud Native Application Protection Platform)についても触れておきます。CNAPPは、クラウド環境全体のセキュリティを包括的に管理するためのソリューションです。CWPPはCNAPPの中核を成す重要な要素の一つです。

CNAPPの主要コンポーネントとCWPPの役割
- クラウドセキュリティポスチャ管理(CSPM): クラウド環境の設定ミスや脆弱性を検出し、改善します。
- クラウドワークロード保護プラットフォーム(CWPP): 稼働中のワークロード(仮想マシン、コンテナ、サーバーレス関数など)のセキュリティを担当します。
- クラウドインフラストラクチャエンタイトルメント管理(CIEM): CIEMは、クラウドリソースへのアクセス権限を管理します。
- クラウドネイティブアプリケーションスキャナー: このコンポーネントは、開発段階のアプリケーションコードやインフラストラクチャアズコード(IaC)の設定をスキャンし、セキュリティの問題を早期に発見します。
CWPPは、このCNAPPの中で、実行時のワークロード保護という重要な役割を果たしています。他のコンポーネントが主に静的な分析や設定管理を行うのに対し、CWPPは動的な環境での継続的な保護を提供します。
CWPPとCSPMの違いと連携
CWPPとCSPMは、どちらもクラウドセキュリティにおいて重要な役割を果たしますが、その焦点やタイミングは以下のように異なります。
特性 | CWPP | CSPM |
---|---|---|
焦点 | 実行中のワークロードの保護 | クラウドインフラストラクチャ |
タイミング | リアルタイムの保護 | 主に事前予防的 |
主な機能 |
|
|
対象 | 仮想マシン、コンテナ、サーバーレス関数など | クラウドアカウント、サービス設定、アクセス権限など |
データ保護 | 実行時のデータ保護 | 保存データの暗号化、アクセス制御ポリシーの管理 |
CWPPとCSPM効果的に連携させることで、より包括的で強力なクラウドセキュリティ体制を構築できます。この連携により、以下のようなメリットが生まれます。
- 総合的な脅威検知:CSPMが検出した設定の脆弱性情報をCWPPが活用し、該当するワークロードの監視を強化します。
- プロアクティブな防御:CWPPが検出した攻撃パターンをCSPMが分析し、類似の攻撃を防ぐためのクラウド設定の改善を推奨します。
- セキュリティギャップの削減:静的な分析(CSPM)と動的な保護(CWPP)を組み合わせることで、セキュリティの死角を最小限に抑えます。
- 効率的なインシデント対応:両ツールからの情報を統合することで、セキュリティチームはより迅速かつ正確にインシデントを分析し、対応することができます。
このように、CWPPとCSPMは互いに補完し合う関係にあり、両者を効果的に連携させることで、クラウド環境のセキュリティを大幅に強化することができます。
CNAPPについては「CNAPPとは?クラウドサービスを利用するなら知っておきたいセキュリティ対策を解説」もご覧ください。
CWPP導入の必要性
クラウドワークロード保護プラットフォーム(CWPP)は、現代のクラウド環境において不可欠なセキュリティソリューションとなっています。その必要性について、以下に詳しく説明します。
クラウド環境特有の脅威への対応
クラウド環境は従来のオンプレミス環境とは大きく異なり、独自の脅威が存在します。CWPPは、これらの脅威に特化した保護を提供します。主な対応領域は以下です。
- コンテナ環境の保護: 脆弱性スキャン、ランタイム保護、ネットワークセグメンテーションを提供します。
- サーバーレス関数のセキュリティ: 関数の実行を監視し、不正な動作を検知します。
- クラウドネイティブな攻撃への対策:「クラウドアカウントハイジャック」など、クラウド特有の攻撃手法に対する防御を提供します。
コンプライアンス遵守の支援
多くの業界で、クラウド環境におけるデータ保護やセキュリティに関する規制が厳格化しています。CWPPは、これらの規制遵守を効率的に支援します。
- 各種規制(HIPAA、GDPRなど)への対応:データの暗号化、アクセス制御、ログ記録などの要件への準拠を確認。
- 自動化されたコンプライアンス報告:規制要件への準拠状況を継続的に評価し、詳細なレポートを自動生成。
運用効率の向上
CWPPの導入により、セキュリティ運用の効率を大幅に向上させることができます。主なメリットは以下になります。
- セキュリティオペレーションの自動化:AIを活用した自動分類と優先順位付けにより、重要度の高いアラートへの対応に集中できます。
- インシデント対応時間の短縮:詳細な情報を自動収集し、迅速な状況把握と対策立案を支援します。
- パフォーマンスの最適化:機械学習機能により、各ワークロードの特性に応じた最適なセキュリティチェックを実行します。
これらの利点により、CWPPの導入は単にセキュリティを強化するだけでなく、運用効率を大幅に向上させ、結果として企業全体の生産性向上に貢献します。
CWPP導入のポイント
CWPPを効果的に導入・運用するためには、適切な選定、計画的な導入、そして継続的な最適化が不可欠です。以下に、CWPPの実践的な活用方法を詳しく解説します。
CWPPの選定ポイント
効果的なCWPPソリューションを選択するためには、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。
- クラウド環境との互換性: 複数のクラウドプラットフォームに対応可能であること。多くの企業が複数のクラウドプロバイダーを利用している現状を踏まえ、すべての環境を一元的に保護できるCWPPを選択することが重要です。
- スケーラビリティと柔軟性: 企業の成長に合わせて拡張可能であること。クラウドリソースは急速に増加する可能性があるため、CWPPもそれに追従できる拡張性を持つことが求められます。
- 他のセキュリティツールとの統合: 既存のセキュリティソリューションとシームレスに連携できること。これにより、総合的な防御力を高めるとともに、運用効率を向上させることができます。
- AIと機械学習の活用: 高度な脅威検知能力を持つこと。日々進化するサイバー脅威に対応するには、パターンベースの検知だけでなく、AIによる異常検知が不可欠です。
- 高度なカスタマイズ性:業界特有の要件に対応可能であること。各業界や企業固有のセキュリティ要件やコンプライアンス基準に柔軟に対応できるCWPPを選択することで、より効果的なセキュリティ体制を構築できます。
- コスト効率: 柔軟な価格モデルを提供していること。初期投資を抑えつつ、利用量に応じて柔軟にスケールアップできるモデルを選択することで、長期的なコスト最適化を図ることができます。
これらの要素を慎重に評価することで、組織のニーズに最適なCWPPソリューションを選択し、効果的なクラウドセキュリティ体制を構築することができます。
CWPPの導入ステップ

CWPPの導入は、組織全体のセキュリティ体制を変革する重要なプロセスです。以下の段階的アプローチを取ることで、スムーズな導入と効果的な活用が可能となります。
- 現状のセキュリティ体制の評価: まず、既存のクラウド環境とセキュリティ対策の詳細な分析を行います。これには、クラウドリソースの棚卸し、現在のセキュリティツールの効果測定、主要なセキュリティリスクの特定が含まれます。この段階で、組織固有の脆弱性や改善が必要な領域を明確にします。
- 要件定義とソリューション選択: 現状分析の結果に基づいて、CWPPに求める具体的な要件を明確化します。これには、必要な保護機能、対応が必要なコンプライアンス要件、既存システムとの統合ニーズなどが含まれます。これらの要件に基づいて、複数のCWPPソリューションを比較評価し、最適なものを選択します。
- パイロット導入:全面展開の前に、限定的な環境でパイロット導入を行います。通常、重要度の低い開発環境や一部の非重要システムを対象とし、1〜3ヶ月程度の期間で実施します。この間、CWPPの性能、使いやすさ、既存システムとの統合性、セキュリティ向上効果などを詳細に評価します。
- 段階的な本番導入: パイロット導入の結果を踏まえ、段階的に本番環境への導入を進めます。典型的には以下のような段階を踏みます。
- 第1段階(1-2ヶ月目):非重要システムへの導入
- 第2段階(3-4ヶ月目):重要度中程度のシステムへの導入
- 第3段階(5-6ヶ月目):最重要システムへの導入 各段階で、セキュリティチームとシステム運用チームが緊密に連携し、問題点の早期発見と対応を行います。
- チューニングと最適化: 本番導入後も、CWPPの継続的なチューニングと最適化が必要です。これには、誤検知が多いアラートルールの調整、パフォーマンスへの影響が大きいスキャンのスケジュール最適化、新たな脅威に対応するためのルール追加などが含まれます。定期的な見直しと調整を行うことで、CWPPの効果を最大化します。
- トレーニングと文書化: CWPPの効果的な活用には、関係者全員の理解と協力が不可欠です。セキュリティチーム、開発チーム、運用チームに対して、CWPPの機能や運用方法、セキュアな開発プラクティスについてのトレーニングを実施します。また、運用手順書やインシデント対応プランを作成し、組織全体でのCWPP活用を促進します。
このような段階的かつ包括的なアプローチを取ることで、CWPPの導入を成功に導き、組織全体のセキュリティ体制を効果的に強化することができます。各ステップで得られた知見を次のステップに活かすことで、継続的な改善と最適化が可能となります。
製造業におけるCWPPの活用
製造業におけるCWPPの重要性が増しています。スマートファクトリー化を目的とした、クラウド利用やIoTデバイスの普及により、製造業特有のセキュリティ課題に対応するためのCWPP活用が進んでいます。
スマートファクトリーでのCWPPの役割
スマートファクトリーでは、生産設備のIoT化や生産管理システムのクラウド化が進んでおり、CWPPはこれらの環境を保護する重要な役割を果たしています。
- 生産ラインの保護:CWPPは、生産ラインに接続された各デバイスやシステムを継続的に監視し、異常な動作や不正アクセスを検知します。
- サプライチェーンセキュリティの強化:CWPPは、サプライヤーとの接続点やデータ交換プロセスを監視し、潜在的な脅威を特定します。
IoTデバイスとCWPPの連携
製造業では多数のIoTデバイスが使用されており、これらのデバイスのセキュリティ管理がCWPPの重要な役割となっています。
- デバイスの可視化と管理:CWPPは工場内のすべてのIoTデバイスを自動的に検出し、それらの脆弱性や設定の問題を継続的に評価します。
- エッジコンピューティングの保護:製造現場でのリアルタイム処理のためにエッジコンピューティングが普及していますが、CWPPはこれらのエッジデバイスも保護対象に含めます。
産業用制御システム(ICS)のセキュリティとCWPPの統合
従来のICSは閉鎖的なネットワークで運用されていましたが、近年はクラウドとの連携が進んでおり、CWPPによる保護が重要になっています。
- ICSとIT環境の統合的保護:CWPPは、ITネットワークとOT(運用技術)ネットワークの境界を監視し、不適切な通信や潜在的な脅威を検知します。
- レガシーシステムの保護:多くの製造業では、最新のセキュリティ対策が困難なレガシーシステムが稼働しています。CWPPは、これらのシステムを直接変更することなく、周囲の環境を監視することで間接的に保護します。
製造業におけるCWPPの活用は、生産性の向上とセキュリティリスクの低減を両立させる重要な戦略となっています。IoTデバイスの増加や産業用制御システムのデジタル化が進む中、CWPPはこれらの環境を包括的に保護し、製造業のデジタルトランスフォーメーションを安全に推進する役割を果たしています。
製造業におけるセキュリティ対策は「攻撃に負けない工場を作る ~製造業のためのサイバーセキュリティ対策指南書~」もご覧ください。
CWPPの今後の展望
AI・機械学習の活用
AIと機械学習技術の進歩は、CWPPの能力を大きく拡張しています。これらの技術がCWPPにさらに深く統合され、より高度なセキュリティ保護を提供することで将来的には次のようなことも期待されています。
- 予測型セキュリティの実現:AIモデルが過去のインシデントデータと現在のシステム状態を分析し、将来の脅威を予測します。これにより、事前の対策が可能となり、セキュリティ体制の先手を打つことができます。
- 自動化された脅威対応: 機械学習モデルが脅威の性質を瞬時に分析し、最適な対応策を自動的に実行します。新種の脅威に対しても、迅速かつ効果的な防御が可能になります。
- コンテキスト認識型のセキュリティ: AIがシステムの状態、ユーザーの行動パターン、ビジネスプロセスなどの広範なコンテキスト情報を考慮し、より精密なセキュリティ判断を行います。これにより、セキュリティと業務効率のバランスが向上します。
これらの先進的な機能により、CWPPはより効果的かつ効率的にクラウド環境を保護し、セキュリティチームの負担を大幅に軽減することが期待されます。
ゼロトラストアーキテクチャとの統合
ゼロトラストセキュリティモデルの普及に伴い、CWPPとゼロトラストアーキテクチャの統合が進んでいます。この統合により、より動的で細粒度なセキュリティ制御が可能になり、次のようなことも期待されています。
- 継続的な検証:CWPPは、クラウドワークロードの継続的な評価と監視を行い、ゼロトラストの原則である「常に検証」を実現します。これにより、異常な動作や不正なアクセスをリアルタイムで検出し、即座に対応することが可能になります。
- 動的なアクセス制御:CWPPはワークロードの状態、ユーザーの振る舞い、データの機密性などの要因を継続的に評価し、リアルタイムでアクセス権限を調整します。これにより、状況に応じた最適なセキュリティレベルを維持することができます。
- 強化されたマイクロセグメンテーション:CWPPはゼロトラストの原則に基づいて、クラウド環境内のリソース間の通信を細かく制御します。これにより、攻撃者の横方向の移動を効果的に防ぎ、被害の拡大を最小限に抑えることができます。
このようなCWPPとゼロトラストの統合は、クラウド環境のセキュリティを新たな次元に引き上げる可能性を秘めています。常に変化する脅威に対して、より適応的で効果的な防御を提供することが期待されます。
ゼロトラストセキュリティモデルの基本概念や導入のメリットについては「ゼロトラストをわかりやすく解説!メリットや注意点などについて知ろう」もご覧ください。
まとめ:CWPPによるクラウドワークロードセキュリティの強化
クラウド環境におけるワークロードの多様化に伴い、新たなセキュリティリスクへの対策が急務となっています。CWPPは、企業のクラウド資産を包括的に保護する重要なソリューションとして注目されています。
さらに、CWPPはゼロトラストセキュリティモデルの実現に貢献し、より強固なセキュリティ体制の構築を可能にします。企業のデジタル競争力と信頼性維持のため、CWPPの導入は重要な戦略となります。CWPPを通じて、クラウドの利点を最大限に活用しつつ、セキュリティリスクを最小限に抑える、これこそが、今日のデジタルビジネスにおける成功の鍵となるでしょう。
Microsoft Defender for CloudのCWPP機能
Microsoft Defender for CloudはAzureのネイティブセキュリティソリューションとして、強力なCWPP機能を提供しています。
主要機能と特徴
Microsoft Defender for Cloudは次のような機能・特徴により包括的かつインテリジェントなクラウドセキュリティソリューションとして、複雑化するクラウド環境を効果的に保護します。
- Azure環境との高い親和性:
- Azure Virtual Machinesの脆弱性スキャンと自動推奨
- Azure Storage AccountsやSQL Databasesのセキュリティ評価
- AKSクラスターのセキュリティ監視と強化
- マルチクラウド環境のサポート:
- AWSアカウントの接続とセキュリティ評価
- Amazon EC2インスタンスの脆弱性スキャン
- AWS S3バケットの設定ミス検出と修正ガイダンス
- 統合セキュリティ管理:
- セキュリティスコアの可視化と改善アクション提示
- リソースごとのセキュリティアラート集約
- コンプライアンス状況の継続的評価
- 高度な脅威検知:
- ファイルレスマルウェアやゼロデイ攻撃の検知
- 異常プロセスやネットワーク接続の検出
- コンテナ環境の不審動作識別
- 自動化されたセキュリティ対応:
- セキュリティ推奨事項に基づく自動修復
- Azure Logic Appsによるカスタムワークフロー
- SIEM/SOARツールとの統合
導入のメリット
- 包括的なワークロード保護:
- 仮想マシン、コンテナ、サーバーレス関数など多様なワークロードの統合的保護
- ネットワーク、ストレージ、データベースなどインフラストラクチャ層全体のセキュリティ強化
- 開発環境から本番環境まで、全ライフサイクルを通じたセキュリティの確保
- 統合されたセキュリティ管理:
- 単一のコンソールからマルチクラウド環境のセキュリティを一元管理
- 脅威検知、脆弱性管理、コンプライアンス対応など複数の機能を統合
- セキュリティスコアによる全体的なセキュリティ状況の可視化と改善の追跡
- スケーラブルな脅威検知と対応:
- クラウドリソースの増加に応じて自動的にスケールする監視と保護
- 機械学習を活用した高度な脅威検知により、新種の攻撃にも対応
- 自動化された対応機能により、セキュリティチームの負荷を軽減しつつ、迅速な脅威対応を実現
- コストの最適化:
- 複数のセキュリティツールの統合による、ライセンスコストの削減
- 自動化された脅威対応による、人的リソースコストの削減
- 予防的なセキュリティ対策による、インシデント対応コストの低減
これらのメリットにより、Microsoft Defender for Cloudの導入は、組織のセキュリティ態勢を強化するだけでなく、運用効率の向上とコスト削減を同時に実現し、クラウド環境における持続可能なセキュリティ戦略の基盤となります。
東京エレクトロンデバイスは適切なソリューション選択をご支援します
東京エレクトロンデバイス(TED)の専門家チームが、Microsoft Defender for Cloudの機能を最大限に活用し、お客様のクラウドセキュリティを強化するための最適な道筋をご提案いたします。詳細については、お気軽にお問い合わせください。
CWPPに関するFAQ
- CWPPの導入にはどれくらいのコストがかかりますか?
CWPPの導入コストは、組織の規模、クラウド環境の複雑さ、選択するソリューションによって大きく異なります。一般的に、クラウドリソースの数や種類に応じた従量課金制のモデルが多く、月額数千ドルから数万ドル程度です。正確な見積もりについては、東京エレクトロンデバイスへお問い合わせください。 - 小規模企業でもCWPPは必要ですか?
はい、規模に関わらずCWPPは有益です。小規模企業でも、クラウドリソースを保護し、コンプライアンスを維持する必要があります。多くのCWPPベンダーは、小規模企業向けの手頃な価格のプランを提供しています。 - CWPPはオンプレミス環境でも使えますか?
一部のCWPPソリューションはハイブリッド環境をサポートしており、オンプレミスのワークロードも保護できます。ただし、主な焦点はクラウド環境にあります。オンプレミス環境のみの場合は、従来型のセキュリティソリューションの方が適している可能性があります。 - CWPPの導入にはどのようなスキルが必要ですか?
CWPPの効果的な導入と運用には、クラウドアーキテクチャ、ネットワークセキュリティ、コンプライアンス、脅威分析などの知識が必要です。東京エレクトロンデバイスではトレーニングプログラムを提供しており、既存のITチームのスキルアップを支援します。 - CWPPは既存のセキュリティツールと置き換える必要がありますか?
必ずしも置き換える必要はありません。CWPPは多くの場合、既存のセキュリティツール(SIEM、EDRなど)と統合して使用されます。ただし、クラウド特化型の機能により、一部の従来型ツールは冗長になる可能性があります。 - CWPPの導入によって、クラウドサービスの利用コストは増加しますか?
短期的にはセキュリティ関連のコストが増加する可能性がありますが、長期的にはインシデント対応コストの削減や運用効率の向上により、全体的なコスト削減につながる可能性が高いです。 - CWPPはプライベートクラウド環境でも効果を発揮しますか?
はい、多くのCWPPソリューションはプライベートクラウド環境もサポートしています。ただし、パブリッククラウド向けの機能ほど充実していない場合があるため、事前に確認が必要です。 - CWPPの導入後、セキュリティチームの役割はどのように変化しますか?
CWPPの導入により、セキュリティチームはより戦略的な役割にシフトします。日常的な監視タスクの多くが自動化されるため、脅威ハンティングや高度な分析、セキュリティ戦略の立案などに注力できるようになります。