Microsoft Azureコラム
Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)
Microsoft Defender for Endpointとは?その特徴やメリット、ユースケースを紹介
近年のリモートワークの普及や働き方改革などにより、エンドポイントに対するセキュリティ対策の重要性は高まっています。その中で、Microsoft Defender for Endpointは、企業の端末を効果的に保護する包括的なエンドポイントセキュリティソリューションを提供します。
本記事では、Microsoft Defender for Endpointの機能とその特徴、導入メリット、さらには具体的なユースケースまでを徹底解説します。

Microsoft Defenderとは
そもそもMicrosoft Defenderとは、Microsoftが提供する包括的なセキュリティ製品群の重要な一角を担う製品群です。デジタル時代における組織や個人のセキュリティニーズに対応するため、幅広い保護機能を提供しています。
このMicrosoftのセキュリティ製品群は、主に3つに分類されます。
- セキュリティ脅威からの保護とクラウドセキュリティ
- データセキュリティ、コンプライアンス対応とプライバシー保護
- IDと管理
Microsoft Defenderは「セキュリティ脅威からの保護とクラウドセキュリティ」に分類され、日々進化するサイバー脅威から、エンドポイント、ネットワーク、クラウドインフラストラクチャを包括的に守ることを目的としています。
Microsoft Defender製品は多種多様なシリーズがあり、組み合わせることでより強固なセキュリティ対策につながります。Microsoft Defenderシリーズは以下の通りです。
Microsoft Defender製品 | 特徴 |
Microsoft Defender for Endpoint | デバイスとエンドポイントを保護する。 |
Microsoft Defender XDR | 高度な脅威ハンティングと迅速なインシデント対応を行う。 |
Microsoft Defender for Identity | ユーザーを保護し、危険な動作を監視する。 |
Microsoft Defender for Cloud Apps | クラウドアプリを保護する。 |
Microsoft Defender for Office 365 | メールの保護、フィッシング攻撃の防止、コラボレーションツールを保護する。 |
Microsoft Defender 脆弱性の管理 | 既知の脆弱性を管理し、セキュリティ体制を追跡する。 |
Microsoft Defender for IoT | IoTデバイスやOT(Operational Technology工場や発電所などで使われる制御・運用技術の総称)環境を保護する。 |
Microsoft Defender for Cloud | クラウド環境のセキュリティ体制管理と脅威保護を包括的に提供する先進的なツール。 |
Windows Defenderとの違いやサービス群としてのMicrosoft Defenderについて詳しくは、「Microsoft DefenderとWindows Defenderの違いとは?それぞれの特徴を解説」をご参照ください。
エンドポイントセキュリティの重要性
現代の企業においては、従業員のPCなどの端末の多くが、社内システムやクラウドサービスに接続されています。これらのエンドポイントは、端末自体への攻撃のみならず、社内システムへのサイバー攻撃の侵入口にもなりかねません。さらに、リモートワークの普及により、業務用PCを自宅や社外で利用する機会が増えたことで、そのリスクはより高くなっています。
そのため、マルウェア感染、データ漏洩、ランサムウェア攻撃などの脅威から組織を守る、エンドポイントのセキュリティ対策は、ビジネスの継続性と信頼性を確保する上で不可欠なものです。
Microsoft Defender for Endpointの機能と特徴
Microsoft Defender for Endpointは、多層的なセキュリティアプローチを採用し、高度な脅威に対する包括的な保護を提供します。その主要な機能と特徴は、企業のセキュリティ態勢を大幅に強化し、複雑化するサイバー脅威に効果的に対応することを可能にします。
OSに標準搭載
Microsoft Defender for Endpointでは、Windows OSの標準機能を利用して監視を行うため、特別なアプリをインストールする必要がないというメリットがあります。そのため、オンボーディングプロセスも非常に簡単に済ませることができます。
また、Microsoft Defender for Endpointは、クラウドベースのセキュリティ分析プラットフォームと連携してエンドポイントから収集したデータを解析しますが、OSそのものがクラウドに組み込まれているわけではありません。クラウド上での高度な分析により、リアルタイムで脅威を検出・対応します。
さらに、ログイン情報やファイルアクセスなどのセキュリティイベント、エンドポイント上の挙動をログとして記録し分析することで、より詳細かつ正確な脅威検知を実現しています。
クラウドベースの セキュリティ分析サービス
Microsoft Defender for Endpointは、クラウドベースのサービスであるため情報更新や専用サーバーの管理が不要という特徴があります。また、エンドポイントで収集された挙動データはクラウドに送信され、Microsoftが保有する膨大なデータベースと照合されます。この過程で、過去の脅威との類似点が精査され、迅速な検出と対策が可能になります。このようなクラウドの強力な分析能力を活用することで、常に最新の脅威に対応できる体制を維持できます。
Microsoftの脅威インテリジェンス
Microsoft Defender for Endpointは、Microsoftの広範な脅威インテリジェンスを活用できます。Microsoftが長年にわたり収集・蓄積してきた高度なセキュリティ情報や分析結果を利用できるため、組織内にサイバーセキュリティの専門家を常駐させる必要がありません。この豊富な知識基盤により、新たな脅威や攻撃手法にも迅速に対応し、組織のセキュリティを常に最新の状態に保つことができます。
Microsoft Defender for Endpoint導入のメリット
Microsoft Defender for Endpointの導入は、組織のセキュリティ態勢を大幅に強化し、複雑化するサイバー脅威に対する効果的な防御を実現します。その主要なメリットは以下の通りです。
統合されたセキュリティプラットフォーム
Microsoft Defender for Endpointは、包括的なセキュリティソリューションとして機能し、複数のセキュリティツールを統合的に監視・管理できます。
- 単一のコンソール:セキュリティ管理者は、一つのダッシュボードから組織全体のセキュリティ状況を把握し、管理することができます。
- シームレスな連携:他のコンポーネントとの緊密な連携により、エンドポイントからクラウドまでを一貫して保護します。
- 効率的な運用:複数のツールの管理や統合にかかる手間を削減し、セキュリティチームの生産性を向上させます。
この統合アプローチにより、効率的なセキュリティ対策を行うことが可能となり、より効果的な脅威の検出と対応が可能となります。
クラウドベースの管理と分析
Microsoft Defender for Endpointのクラウドベースのアーキテクチャは、セキュリティ運用の効率化と高度な分析を可能にします。
- スケーラブルな保護:組織の規模や地理的分散に関わらず、すべてのエンドポイントを一元的に管理・保護できます。
- リアルタイムの脅威インテリジェンス:Microsoftの広範なセンサーネットワークから収集された最新の脅威情報を、リアルタイムで活用できます。
- 高度なデータ分析:大量のセキュリティデータをクラウド上で分析し、複雑な脅威パターンや潜在的なリスクを特定します。
クラウドベースのアプローチにより、組織は常に最新のセキュリティ機能にアクセスし、進化する脅威に対して迅速に適応することができます。
Microsoft Defender for Endpointのプラン
Microsoft Defender for Endpoint には「Defender for Endpoint Plan 1」と「Defender for Endpoint Plan 2」の2つのプランがあります。Plan1とPlan2には提供する機能に差があるため、自社にとって適したプランを選択しましょう。Plan1では基本的な機能が利用できます。一方でPlan2はPlan1の機能に加えて、自動調査やエンドポイントでの検出や対応などの、より高度な機能も利用できます。
以下の両プランの機能比較一覧を参考にしてください。
機能 | Plan1 | Plan2 |
次世代の保護 (マルウェア対策とウイルス対策を含む) | 〇 | 〇 |
攻撃面の減少 | 〇 | 〇 |
手動応答アクション | 〇 | 〇 |
集中管理 | 〇 | 〇 |
セキュリティレポート | 〇 | 〇 |
API | 〇 | 〇 |
デバイス検出 | ― | 〇 |
脅威と脆弱性の管理 | ― | 〇 |
自動調査および対応 | ― | 〇 |
高度な追及 | ― | 〇 |
エンドポイントでの検出と対応 | ― | 〇 |
Microsoft 脅威エキスパート | ― | 〇 |
デバイスベースのアクセス制御 | 〇 | 〇 |
出典:マイクロソフト社サイトの情報(2024年8月現在)から作図
Microsoft Defender for Cloudとの連携
Microsoft Defender for EndpointとMicrosoft Defender for Cloudの連携は、組織のセキュリティをエンドポイントからクラウドまで包括的に強化することにつながります。
エンドポイントからクラウドまでの統合保護
この連携により、以下のような統合保護が実現します。
- 一元的な可視性:エンドポイントとクラウドリソースのセキュリティ状況を単一のダッシュボードで把握できます。
- クロスプラットフォーム保護:オンプレミス、Azure、AWS、GCPなど、複数の環境にまたがるリソースを統合的に保護します。
- 脅威インテリジェンスの共有:エンドポイントで検出された脅威情報をクラウド環境のセキュリティ強化に活用できます。
- 自動化されたワークフロー:エンドポイントとクラウドのセキュリティイベントに対して、統合された自動対応が可能になります。
相乗効果によるセキュリティ強化
Microsoft Defender for EndpointとMicrosoft Defender for Cloudの連携は、単なる機能の統合以上の価値を生み出します。
- コンテキスト豊富な脅威分析:エンドポイントとクラウドの両方からのデータを組み合わせることで、より精度の高い脅威分析が可能になります。
- 迅速なインシデント対応:エンドポイントでの脅威検知をトリガーに、クラウドリソースの自動隔離など、包括的な対応が可能になります。
- セキュリティスコアの向上:統合されたベストプラクティスの適用により、組織全体のセキュリティ態勢を効果的に改善できます。
- コンプライアンスの簡素化:エンドポイントからクラウドまでの統合視点で、各種規制やコンプライアンス要件への適合を管理できます。
ユースケース:企業でのMicrosoft Defender for Endpoint活用例
Microsoft Defender for Endpointは、さまざまな規模や業種の企業で活用されています。以下に、具体的なユースケースを紹介します。
大企業での導入例
ある大企業A社では、グローバルに展開する複数の拠点と数万台のエンドポイントのセキュリティ管理が困難でした。そこで、Microsoft Defender for Endpointを全社的に展開し、統合管理を実現しました。その結果、以下のような効果が表れました。
- セキュリティインシデントの検出時間を平均60%短縮
- 自動化による対応時間の75%削減
- グローバルでのセキュリティポリシーの一元管理を実現
これにより、膨大な数のエンドポイントの効果的なセキュリティ管理を実現しています。
中小企業でのセキュリティ強化
あるITサービス企業B社では、限られたIT予算とセキュリティ人材で、高度化する脅威に対応する必要がありました。そこでMicrosoft 365 E5ライセンスの一部としてMicrosoft Defender for Endpointを導入しました。その結果、以下のような効果が表れました。
- セキュリティ関連コストを年間20%削減
- 従業員のセキュリティ意識が向上し、フィッシング攻撃の成功率が50%低下
- コンプライアンス監査への対応工数を40%削減
これにより、限られた人材でも高度なセキュリティを実現することに成功しています。
これらの事例は、Microsoft Defender for Endpointがさまざまな規模の企業にとって効果的なセキュリティソリューションであることを示しています。
中小企業向けや個人向けのMicrosoft Defenderについて
p>Microsoft Defender for Endpointは、より高度で複雑なセキュリティ対策が必要な、大企業(エンタープライズ企業)向けに設計されています。しかし、そこまで高度な対策が必須でなく、また、大企業として投資できるリソースに限りがある中小企業向けのサービスが利用できます。従業員300名以下の中小企業向けには、Microsoft Defender for Businessが用意されています。Microsoft Defender for Endpointをフル活用するためにはセキュリティ知識が豊富な設計者が必要になりますが、そのような技術者配置が困難な企業でも、自動化された脅威検出と対応機能により、特に高度なセキュリティ知識がない場合でも導入可能です。
一方、Microsoft Defender for Endpoint Plan1とPlan2は、より大規模な組織向け、かつ、より高度なセキュリティ対策要求に応えうる製品です。Plan1は基本的な脅威保護機能を提供し、Plan2はさらに高度な脅威ハンティングや自動調査・修復機能を含んでいます。Defender for Businessは、これらの機能を中小企業向けに最適化しています。
個人ユーザー向けには、Microsoft Defender for individualsが提供されています。この製品は、Microsoft 365 PersonalまたはFamilyサブスクリプションの一部として利用可能です。個人や家族のデバイスを包括的に保護し、オンラインセキュリティダッシュボードを通じて、接続されたすべてのデバイスのセキュリティ状態を一元管理できます。
Microsoftは企業規模や個人のニーズに応じた柔軟なセキュリティソリューションを提供しています。
Microsoft Defender for Endpointを活用して企業の資産を守る
Microsoft Defender for Endpointは、現代のサイバーセキュリティ課題に対する包括的かつ強力なソリューションです。Microsoft Defender for Endpointを活用することで、エンドポイントからクラウドまで統合的に保護できるため、企業の大幅なセキュリティ強化につながります。サイバー脅威が日々進化する中で、Microsoft Defender for Endpointは組織のデジタル資産を守る強力な味方となるでしょう。
なお、クラウドサービスを利用している企業は多いでしょう。エンドポイントのセキュリティ対策とともに、Microsoft Defender for Cloudなどによるクラウド上のセキュリティ対策や連携も重要です。また、Microsoft Defender for IoTも提供されており、製造業をはじめとした業界のOT(Operational Technology)環境のソシューションもありますので、セキュリティ対策や改善をご検討の方は以下のボタンからご相談ください。
Microsoft Defender for Endpointに関するFAQ
- Q: Microsoft Defender for Endpointは、他のアンチウイルスソフトウェアと併用できますか?
基本的には、他のアンチウイルスソフトウェアとの併用は推奨されません。Microsoft Defender for Endpointは包括的な保護を提供するため、多くの場合、単独で十分なセキュリティを確保できます。 - Q: クラウドベースのソリューションですが、オフライン環境でも機能しますか?
はい、Microsoft Defender for Endpointはオフライン環境でもマルウェア対策などの基本的な保護を提供しますが、クラウドに接続されている状態で最大限の機能を発揮します。オフライン時は、リアルタイムの脅威インテリジェンスや高度なクラウドベースの分析が利用できないため、オンライン環境での利用が推奨されます。 - Q: MacOSやLinuxデバイスでも使用できますか?
はい、Microsoft Defender for Endpointは、Windowsに加えて、macOS、Linux、iOS、Androidといったマルチプラットフォームにも対応しています。これにより、異なるOSを使用する環境においても一貫したセキュリティを提供します。 - Q: Microsoft Defender for Endpointは、エンドポイントのパフォーマンスに影響を与えますか?
Microsoft Defender for Endpointは、エンドポイントへの影響を最小限に抑えるよう設計されています。ただし、詳細なスキャンや大規模な更新時には一時的にパフォーマンスへの影響が大きくなる場合があります。 - Q: Microsoft Defender for Endpointは、GDPR等のデータ保護規制に準拠していますか?
はい、Microsoft Defender for Endpointは、GDPR、HIPAA、ISO 27001など、主要なデータ保護規制やセキュリティ標準に準拠するよう設計されています。Microsoftは定期的に第三者機関による監査を受け、コンプライアンスを維持しています。 - Q: 既存のセキュリティ情報イベント管理(SIEM)ツールとの統合は可能ですか?
はい、Microsoft Defender for Endpointは、多くの主要なSIEMソリューションとの統合をサポートしており、Azure Sentinelとのネイティブ統合も提供されています。また、IBM QRadar、Splunk、ArcSightなどの一般的なSIEMツールとの連携が可能です。 - Q: Microsoft Defender for Endpointは、ゼロデイ攻撃からも保護できますか?
Microsoft Defender for Endpointは、AIや機械学習を用いた行動分析で既知および未知の脅威(ゼロデイ攻撃を含む)を検出・防御しますが、ゼロデイ攻撃に対する完全な防御を保証するものではありません。そのためセキュリティ対策は多層的に構築することが推奨されます。 - Q: ライセンスの種類や価格はどのようになっていますか?
Microsoft Defender for Endpointのライセンスは、主にMicrosoft 365 E5やMicrosoft 365 E5 Securityに含まれています。また、スタンドアロンのライセンスとしても購入可能です。詳細な価格情報については、Microsoftの公式サイトや東京エレクトロンデバイスにお問い合わせください。
ただし、クラウドに接続されている場合に最も効果的に機能します。