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2025/4/30

Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)

Microsoft DefenderとWindows Defenderの違いとは?マイクロソフトセキュリティアプローチの進化とそれぞれの特徴を解説

デジタル時代のセキュリティは日々進化しています。特にマイクロソフトのセキュリティ製品は多くのユーザーに利用されていますが、その名称や機能の変遷に戸惑う方も少なくありません。本記事では、Windows DefenderとMicrosoft Defenderの違いを明確にし、マイクロソフトのセキュリティ戦略の変化とその背景、そして最新のセキュリティ製品ラインナップまでを詳しく解説します。

変化するマイクロソフトのセキュリティ戦略

マイクロソフトのセキュリティ戦略は、デジタル脅威の進化と共に大きく変貌を遂げてきました。単なるウイルス対策から、AIやクラウド技術を取り入れた包括的なセキュリティソリューションへと進化したため、その製品名称も変更されてきました。この変化は、ユーザーのニーズと脅威の実態に即したものと言えるでしょう。

セキュリティ脅威の進化と企業の対応

デジタル世界の発展に伴い、セキュリティ脅威も複雑化・高度化、増加の一途をたどっています。単純なウイルスから、ランサムウェア、フィッシング、標的型攻撃まで、その形態は多岐にわたります。また、2022年の国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のレポートによると、2015年と比較してサイバー攻撃関連通信数は8.3倍も増加しているなど、従来の対策では防ぎきれない状況になっています。企業はこれらの脅威に対し、より包括的で高度なセキュリティ対策を求めるようになりました。

出典:NICTER観測レポート2022|NICT

マイクロソフトによるセキュリティアプローチの変遷

マイクロソフトは、この変化に対応すべく、セキュリティアプローチを大きく転換させてきました。初期のWindows Defenderは、Windows XP用のスパイウェア対策プログラムとして始まりましたが、徐々にその機能を拡充。現在では、AIを活用した高度な脅威検知や、クラウドベースの分析機能を備えた総合的なセキュリティプラットフォームへと進化しています。この進化の過程で、Windows Defenderから Microsoft Defenderへと名称変更が行われ、より広範な保護を提供する製品群へと拡大しました。

Windows DefenderからMicrosoft Defenderへ:リブランディングの背景

マイクロソフトのセキュリティ製品の変遷を理解することは、現在の製品ラインナップを把握する上で重要です。Windows Defenderから始まり、Microsoft Defenderへと至る道のりには、技術的進化だけでなく、マイクロソフトのセキュリティに対する意識の変化が反映されています。

Windows Defenderの誕生と進化

Windows Defenderは、2004年にマイクロソフトが買収したGIANT AntiSpywareをベースに開発されました。先述したように、当初はスパイウェア対策プログラムとして提供されていましたが、Windows Vistaからは標準搭載され、Windows 8以降ではフルスケールのアンチウイルスソフトウェアとして機能するようになりました。

2017年には、「Windows Defender」から「Windows Defender ウイルス対策」へと名称を変更し、セキュリティ対策全般のブランド名として活用すると発表されました。そして、2019年には「Microsoft Defender」と名称をさらに変更しています。

Microsoft Defenderへの移行:その理由と意義

Microsoft Defenderへの移行は、単なる名称変更以上の意味を持っています。この変更は、マイクロソフトのセキュリティビジョンの拡大を反映したものです。Windows OSのみならず、macOS、iOS、Androidなど、マルチプラットフォームでの保護を提供するという方針転換を示しています。また、エンドポイントだけでなく、クラウドやIoTデバイスまでを包括的に保護するという、より広範なセキュリティ戦略の採用を意味しています。この移行により、マイクロソフトは総合的なセキュリティソリューションプロバイダーとしての立場を強化しました。

Windows 11に標準搭載されるWindows Defenderウイルス対策

最新のオペレーティングシステムであるWindows 11では、セキュリティ機能がさらに強化されています。特に、「Windows Defenderウイルス対策(Microsoft Defenderウイルス対策とも呼ばれる)」は、システムに深く統合され、ユーザーに強力な保護を提供しています。この機能は、リアルタイム保護、クラウドベースの保護、自動サンプル送信などを備え、常に最新の脅威に対応できるよう設計されています。

ちなみに、「Windows Defender ウイルス対策」は、Windows専用のセキュリティソリューションを指し、主にWindows 10/11に標準搭載されています。現在の「Microsoft Defender」は、複数プラットフォーム(Windows、macOS、iOS、Android)に対応したセキュリティソリューションを提供し、エンタープライズ向けには有料の「Microsoft Defender for Endpoint」が提供されています。家庭向けのMicrosoft DefenderもMicrosoft 365 Personal/Familyプランに含まれています。

マイクロソフトのセキュリティ製品群

マイクロソフトは、包括的なセキュリティソリューションを提供するために、多様な製品群を展開しています。これらの製品は、個人ユーザーから大規模企業まで、さまざまなニーズに対応できるよう設計されています。

セキュリティ脅威からの保護とクラウドセキュリティ

マイクロソフトのセキュリティ製品群は、エンドポイントからクラウドまで、幅広い領域をカバーしています。Microsoft Defender for Endpointは、高度な脅威保護や自動化された調査・修復機能を提供し、企業のエンドポイントセキュリティを強化します。一方、Microsoft Defender for Cloudは、マルチクラウド環境におけるセキュリティポスチャ管理やワークロード保護を実現し、クラウドネイティブなセキュリティソリューションを提供しています。

データセキュリティ、コンプライアンス対応とプライバシー保護

データの保護とコンプライアンス対応は、現代企業にとって重要な課題です。Microsoft Information Protectionは、機密データの分類、ラベリング、保護を自動化し、データの漏洩リスクを最小限に抑えます。また、Microsoft Purviewは、データの管理や機密データの保護などの機能のほか、クラウドやオンプレミスなど、さまざまなデータの保護からリスク管理まで行える機能が搭載されています。

IDと管理

IDは現代のセキュリティアーキテクチャの中心です。Microsoft Entra(旧Azure Active Directory)は、クラウドベースのIDおよびアクセス管理サービスを提供し、シングルサインオン、多要素認証、条件付きアクセスなどの機能を通じて、セキュアなアクセス管理を実現します。

Microsoft Defender製品ラインナップ

Microsoft Defenderブランドの下で提供される製品群は、包括的なセキュリティソリューションを形成しています。各製品の特徴と主な機能を見ていきましょう。

Microsoft Defender製品特徴
Microsoft Defender for Endpointデバイスとエンドポイントを保護する。
Microsoft Defender XDR高度な脅威ハンティングと迅速なインシデント対応を行う。
Microsoft Defender for Identityユーザーを保護し、危険な動作を監視する。
Microsoft Defender for Cloud Appsクラウドアプリを保護する。
Microsoft Defender for Office 365メールの保護、フィッシング攻撃の防止、コラボレーションツールを保護する。
Microsoft Defender 脆弱性の管理既知の脆弱性を管理し、セキュリティ体制を追跡する。
Microsoft Defender for IoTIoTデバイスやOT(Operational Technology工場や発電所などで使われる制御・運用技術の総称)環境を保護する。
Microsoft Defender for Cloudクラウド環境のセキュリティ体制管理と脅威保護を包括的に提供する先進的なツール。

Microsoft Defender for Endpoint

Microsoft Defender for Endpoint(旧称:Microsoft Defender ATP)は、マイクロソフト社が提供する先進的なEDR(Endpoint Detection and Response)ソリューションです。特に未知の脅威に対する防御と迅速な対応に焦点を当てており、現代のサイバーセキュリティ環境において重要な役割を果たしています。

主な特徴としては以下の通りです。

高度な脅威検知と対応

Microsoft Defender for Endpointは、エンドポイントに侵入した脅威を迅速に検知し、除去する能力を持っています。これにより、サイバー攻撃による被害を最小限に抑えることが可能です。

クラウドベースのサービス

クラウドサービスとして提供されるため、常に最新の状態を維持できます。これにより、進化し続けるサイバー脅威に対して、常に最新のセキュリティ対策を適用することができます。

OS標準搭載でエージェントレス

Microsoft Defender for Endpointでは、Windows OS の標準機能を利用して監視を行うため、特別なアプリをインストールする必要がないというメリットがあります。そのため、オンボーディングプロセスも非常に簡単に済ませることができます。これにより、導入と管理のコストと手間を大幅に削減できます。

高度な行動分析

クラウド上に組み込まれた挙動センサーにより、ログイン、ファイルアクセスなどのセキュリティイベントやエンドポイント上の挙動を詳細に記録し分析します。これにより、より精密な脅威検知が可能になります。

グローバルな脅威インテリジェンス

マイクロソフトが保有する膨大なセキュリティデータと照合することで、過去の脅威との類似点を迅速に特定し、効果的な対策を講じることができます。

Microsoft Defender for Endpointについて詳しくは、「Defender for Endpointとは?その特徴やメリット、ユースケースを紹介 」をご参照ください。

Microsoft Defender XDR

拡張検出と応答(XDR)ソリューションとして、エンドポイント、ID、データ、メール、アプリケーションなど、多様なセキュリティシグナルを統合し、高度な脅威ハンティングと迅速なインシデント対応を実現します。

Microsoft Defender for Identity

オンプレミスのActive DirectoryとMicrosoft Entraに接続されたID情報を保護します。不審なアクティビティを検知し、高度な攻撃や内部脅威から組織を守ります。

Microsoft Defender for Cloud Apps

クラウドアプリケーションの利用状況を可視化し、データ漏洩防止や脅威保護を提供します。シャドーITの発見やリスク評価、コンプライアンス管理をサポートします。

Microsoft Defender for Office 365

Officeアプリケーションとメールシステムを標的とした高度な脅威から保護します。フィッシング、マルウェア、ランサムウェアなどの攻撃をAIと機械学習を用いて検知・ブロックします。

Microsoft Defender 脆弱性の管理

組織全体のデバイスやアプリケーションの脆弱性を継続的に評価し、優先順位付けされた修復ガイダンスを提供します。これにより、セキュリティリスクを効果的に低減することが可能です。

Microsoft Defender for IoT

IoTデバイスやOT(Operational Technology工場や発電所などで使われる制御・運用技術の総称)ネットワークのセキュリティを確保します。ネットワークトラフィックの分析や、デバイスの異常検知を通じて、産業制御システムや重要インフラを保護します。

工場のサイバーセキュリティ対策については「攻撃に負けない工場を作る ~製造業のためのサイバーセキュリティ対策指南書~」を、OTセキュリティ対策については「OTのセキュリティは大丈夫?知っておくべき脅威と工場現場を強固に守るための対策」を、Microsoft Defender for IoTについては「Microsoft Defender for IoT」をご参照ください。

Microsoft Defender for Cloud

Microsoft Defender for Cloudは、クラウド環境のセキュリティ体制管理と脅威保護を包括的に提供する先進的なツールです。「Microsoft Defender for Cloud」は、Azure Security CenterとAzure Defenderが2021年11月に統合されて改名されました。これにより、Azure環境だけでなくAWSやGCPなどのマルチクラウド環境にも対応する包括的なセキュリティ体制管理(CSPM)とクラウドワークロード保護(CWPP)を提供しています。

主要な特徴としては、以下の通りです。

マルチクラウド対応

Microsoft Defender for Cloudの特筆すべき点は、Azure環境だけでなく、オンプレミス、AWS、GCPなど、多様なクラウド環境をカバーできることです。これにより、複雑化するハイブリッドおよびマルチクラウド環境において、一元的なセキュリティ管理が可能となります。

包括的なセキュリティ管理

主に以下の2つの機能を柱としています。

直感的なダッシュボード

セキュリティスコアを用いた可視化により、組織のセキュリティ状況を一目で把握できます。

Microsoft Defender for Cloud にはMicrosoft Defender for ServersやMicrosoft Defender for Storageなど、さまざまなシリーズがあり、より効果的なセキュリティシステムを構築します。ぜひこの機会に確認しておきましょう。

Microsoft Defenderを活用して企業の資産を守ろう

Microsoft DefenderとWindows Defenderの違いは、主にその適用範囲と機能の拡張にあります。Windows Defenderが主にWindows OS向けのセキュリティ機能を指すのに対し、Microsoft Defenderは包括的なセキュリティエコシステムを表します。この変遷は、セキュリティ脅威の進化とマイクロソフトのセキュリティ戦略の変化を反映しています。

現代のデジタル環境では、エンドポイントからクラウド、IoTデバイスに至るまで、包括的な保護が必要です。Microsoft Defenderファミリーの各製品は、これらの多様なニーズに応えるよう設計されており、組織の規模や要件に応じて柔軟に選択・導入することができます。

セキュリティは終わりのない旅です。テクノロジーの進化と共に、新たな脅威が常に出現します。マイクロソフトは継続的な製品開発と更新を通じて、これらの課題に対応し続けています。ユーザーは、自身の環境に適したセキュリティソリューションを選択し、常に最新の保護を維持することが重要です。

さらにMicrosoft Defenderについて詳しく知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

Microsoft Defender / Windows Defender FAQ

  • Q: Windows DefenderとMicrosoft Defenderは同じものですか?
    基本的な機能は同じですが、Microsoft Defenderはより広範な保護を提供する包括的なセキュリティソリューションを指します。
  • Q: Microsoft Defender for Endpointは無料ですか?
    Windows Defenderとは異なり、Microsoft Defender for Endpointは有料のエンタープライズ向け製品です。
  • Q: Microsoft Defenderは他のアンチウイルスソフトと併用できますか?
    通常、他のアンチウイルスソフトとの併用は推奨されません。競合を避けるため、一つのアンチウイルスソフトを選択することがベストプラクティスです。
  • Q: Microsoft Defender for Cloudは、AWSやGoogle Cloudでも使用できますか?
    はい、Microsoft Defender for Cloudはマルチクラウド環境をサポートしており、AWSやGoogle Cloudなどの他社クラウドプラットフォームでも利用可能です。 はい、Microsoft Defender for Cloudはマルチクラウド環境をサポートしており、AWSやGoogle Cloudなどの他社クラウドプラットフォームでも利用可能です。
  • Q: Windows 11では、Microsoft Defenderを無効にすることはできますか?
    Windows 11では、Microsoft Defenderを完全に無効にすることは推奨されていませんが、一時的に無効にしたり、特定の機能をカスタマイズしたりすることは可能です。
  • Q: Microsoft Defender for Office 365は、Gmailなど他のメールサービスでも使えますか?
    Microsoft Defender for Office 365は主にMicrosoft 365環境向けに設計されていますが、一部の機能は他のメールサービスと統合することができます。詳細はMicrosoftのドキュメンテーションを確認してください。
  • Q: Microsoft Defenderの更新頻度はどのくらいですか?
    Microsoft Defenderは、Windows Updateを通じて定期的に更新されます。また、リアルタイムの脅威インテリジェンスを活用して、常に最新の保護を提供しています。
  • Q: Microsoft Defender for Identityは、オンプレミスのActive Directoryでも使用できますか?
    はい、Microsoft Defender for IdentityはオンプレミスのActive DirectoryとMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)の両方をサポートしています。
  • Q: Microsoft Defender for Endpointのライセンスは、どのように取得できますか?
    Microsoft Defender for Endpointは、Microsoft 365 E5、Microsoft 365 E5 Security、Windows 11 Enterpriseなど、特定のライセンスに含まれています。また、スタンドアロンライセンスとしても購入可能です。
  • Q: Microsoft Defenderファミリーの製品間で、データや脅威インテリジェンスは共有されますか?
    はい、Microsoft Defenderファミリーの製品間では、Microsoft Security Graph を通じてデータと脅威インテリジェンスが共有されます。これにより、より包括的で効果的な保護が実現されています。