Microsoft Azureコラム
Writer:手戸 蒼唯（てど あおい）
GitHub Copilot Enterpriseとは？組織全体でのAI活用と管理機能について解説
「GitHub Copilot Enterprise」は、GitHub Copilotの高度な機能に組織管理とセキュリティを加えた、企業の開発効率を大きく向上させるAIコーディング支援ツールです。 企業のコードベースを理解して的確な提案を行い、プルリクエストの自動要約や知識ベースとの統合など、チーム開発に特化した機能を搭載しています。高度なセキュリティ管理により、企業での安全な利用を実現します。 本記事では、GitHub Copilot Enterpriseの特徴や導入方法、具体的な活用シナリオから、セキュリティ対策、料金プランまで詳しく解説します。 法人利用における機能選択から運用管理まで、導入に必要な情報を体系的にご説明します。 東京エレクトロンデバイスは GitHub Copilot Enterpriseの法人利用をサポートしています。導入をお考えの方はお気軽にお問い合わせください。
ネクストステップにおすすめ
製造業におけるデータ活用の課題、新しいデータ活用基盤の求められる要件や導入ステップを解説します。
GitHub Copilot Enterpriseとは
GitHub Copilot Enterpriseは、企業向けに特化されたAIコーディング支援ツールで、GitHubのエンタープライズプランにて追加オプションとして選択することができます。
GitHub Copilotの強力なコード補完機能に加え、企業向けの管理機能や高度なセキュリティ機能も備わっています。そのため、チーム全体での効率的なコーディングや組織のセキュリティポリシーに沿った利用にも役立ちます。
開発者の生産性向上とセキュリティ管理を実現するために有用なGitHub Copilot Enterpriseについて本記事では徹底的に解説していきます。
GitHub Copilot Enterpriseの特徴
まずは、GitHub Copilot Enterpriseの特徴についてご紹介します。
コードベースに特化したチャット機能
GitHub Copilot Enterpriseのコードベースに特化したチャット機能は、チャットを通じて企業のコードベースに関する質問にリアルタイムで応答する仕組みです。次のような特徴があります。
- 組織のコードに特化したアシスト
企業のリポジトリを参照しながら動作するので、質問に対してそのコードベースに関連する正確な回答やアドバイスを提供します。 - バグの診断や改善提案
開発中に発生したバグやエラーに対して、コードベースを踏まえた解決方法や改善案を提案します。 - コーディング標準へのアドバイス
企業固有のコーディングのルールがある場合、ルールに沿ったコーディングアシストも可能です。企業のコーディングガイドラインに準拠した方法でのリファクタリングやコード改善の提案も受けられます。 - 知識の共有と効率化
コードベースに関する質問を（難しい専門用語だけではなく）自然な日本語で行うことができるので、新しくプロジェクトに参加したメンバーも効率よくコードを理解することができます。
プルリクエストのサマリー生成
プルリクエストサマリー生成機能とは、AIがプルリクエストの内容を読み取り、その変更点や重要な部分を自動的に短くまとめる機能です。
そもそもプルリクエストとは、コードの変更提案をチームに知らせるために使われる文章のことですが、特に大規模な変更の場合に人がプルリクエストを書くと文章が長くなったり詳細になりすぎて要点が理解しづらくなったりすることがあります。
この機能を使えば、AIが変更点の要点を簡潔に説明するため、重要な部分をすぐに把握でき、レビュー作業がスムーズになります。
知識ベースとの統合
GitHub Copilot Enterpriseは、コード以外のドキュメントやナレッジベースも参照して、文脈に応じた提案を行う仕組みです。
組織内のコード・ドキュメント・ナレッジベースの内容を学習して、より適切で文脈に沿ったコード提案を行ってくれます。
たとえば、組織独自のコーディング規約やルールに基づいたコードの提案してくれたり、過去の開発内容やドキュメントの情報を類似の実装の際に提供してくれたりします。
そのため、開発者は組織の既存の知識を活用しながら、効率的に開発を進めることができるようになります。
Bing経由のWeb検索機能
Bing検索はCopilotチャットに統合されているので、ユーザーはコードを書きながら必要な情報を直接インターネットから入手することができます。
これは、コーディング中にリアルタイムでリファレンスを確認したり、解決方法を調べたりするのにとても便利な機能です。
GitHub Copilot Enterpriseの導入と設定
次に、GitHub Copilot Enterpriseの導入方法や設定についてご紹介します。
前提条件
まず、押さえておくべき点として、GitHub Copilot Enterpriseプランだけ単独で加入することはできないということです。
GitHub Copilot EnterpriseはあくまでGitHub Enterprise Cloudプランの追加オプションです。そのため、利用するにはGitHub Enterprise Cloudプランに加入している必要があります。
つまり、GitHub Enterprise Cloudプランがベースとなり、その上で追加オプションとしてGitHub Copilot Enterpriseを利用する形となります。
GitHub Enterprise Cloudについては、こちらの記事もご覧ください。
GitHub Enterprise Cloudとは？主要機能や価格体系、セキュリティ面について解説
GitHub Copilot Enterprise利用の流れ
前提条件を満たしたうえで、GitHub Copilot Enterpriseを利用するには以下のステップが必要です。
- GitHub Copilot Enterpriseライセンスを購入
- Copilotの有効化と設定
- リポジトリとナレッジベースの設定・アクセス制御
GitHub Copilot Enterpriseライセンスの購入
東京エレクトロンデバイスは、MicrosoftのCSP（クラウドソリューションプロバイダー）として、GitHub Enterprise CloudとGitHub Copilot Enterpriseのライセンス提供を行っています。
- GitHub Enterprise Cloudの新規導入
- GitHub Copilot Enterpriseのライセンス購入
- 既存契約の追加ライセンス取得
GitHubソリューションに関するご相談は東京エレクトロンデバイスまでお気軽にお問い合わせください。
Copilotの有効化と割り当て
ライセンスを得たら、組織の管理者はGitHubの管理画面を使って、Copilot Enterpriseの機能を有効化する必要があります。この操作により、組織内でCopilotの利用が許可され、機能が使用可能になります。
その後、管理者は各ユーザーにCopilot Enterpriseライセンスを個別に割り当てる必要があります。この作業を行うことで、割り当てられたユーザーだけがCopilot Enterpriseの機能を利用できるようになります。
学習対象リポジトリの選択
管理者は、Copilotが学習するリポジトリを指定する必要があります。
企業内のすべてのリポジトリを対象とするのではなく、特定のリポジトリだけを学習対象にすることで、コード補完に使用される情報を企業のニーズやセキュリティ要件に合わせた制御を行うことができます。
ナレッジベースの登録と更新
管理者は、企業のナレッジベース（組織の業務やプロジェクトに関する情報を集めたデータベースのようなもの）をCopilotに組み込むことができます。
具体的には、ナレッジベースに登録したいガイドラインやFAQドキュメントなどがある場合、管理者が指定したリポジトリやフォルダにアップロードします。
組織レベルでのアクセス管理
管理者は、企業内でのCopilot Enterpriseのアクセスを柔軟に管理することができます。
特定のユーザーやチームにだけ利用を許可したり、特定のリポジトリに限定してCopilot Enterpriseを使えるように設定したりすることが可能です。
GitHub Copilot Enterpriseの活用シナリオ
ここではCopilot Enterpriseの具体的な活用場面についてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
コードナビゲーションと理解の効率化
Copilot Enterpriseでは、コードの意味や目的を自然な言葉で質問したり、AIがユーザーの必要とする箇所（特定の関数、クラス、定義）に素早くアクセスしたりすることができます。そのため、ユーザーの理解やコード作成の効率化につながります。
たとえば、
- 「ユーザー認証を担当する関数を表示して」などと指示すると、Copilotが関連する関数やクラスに案内します。
- 関数名や変数名を入力し始めると、Copilotが候補を提示し、選択するだけでその場所にカーソルごと移動することができます。
新規機能の迅速な実装
Copilot Enterpriseを使うと、新しい機能の実装がスピードアップします。
たとえば、
- 「ユーザー認証機能を追加したい」と指示すると、Copilotはログインやログアウトの基本構造、必要な関数などのコードを自動生成されます。
- 「画像処理をしたい」という指示には、PillowやOpenCVなど、適切なライブラリのインポート例を提示します。
こうした機能の助けによって、新しい機能の実装をスムーズに進めることができます。
レガシーコードの改善
Copilot Enterpriseは、古いコード（レガシーレコード）を最新の基準に合わせて改善するためにも役立ちます。
たとえば、以下の場面で活用されます。
- レガシーコードを解析して、新しいコーディング規約に沿った書き方を提案
- 潜在的なバグやセキュリティリスクを見つけて修正案を提供
プルリクエストレビューの効率化
GitHub Copilot Enterpriseは、プルリクエスト内の変更点を自動で要約して、プルリクエストサマリーを生成します。
また、要約に加えて潜在的な問題点の指摘や改善提案も行うので、レビュアーの効率的なコード確認に有効です。
GitHub Copilot Enterpriseのセキュリティとコンプライアンス
Copilot Enterpriseは大変便利な一方で、企業の情報にアクセスする場面が非常に多いためセキュリティやコンプライアンスが心配という方も多いかと思います。そこで、Copilot Enterpriseのセキュリティとコンプライアンスについてご説明します。
データプライバシーとセキュリティ対策
Copilot Enterpriseでは、企業のデータを安全に扱うために、以下のような対策が講じられています。
- 専用インフラ環境
コードやデータはGitHubの専用インフラで処理され、他の組織からのアクセスが制限されています。 - データ分離管理
企業ごとにデータが分離され、外部の影響を受けないよう設計されています。 - ローカル処理
データが外部に送信されることなく、GitHub内で直接処理されるため、情報漏洩のリスクが低減されます。 - データ保護基準の遵守
GDPRなどのデータ保護基準に準拠し、企業のプライバシーを守ります。
ファイル除外機能
GitHub Copilot Enterpriseでは、特定のファイルをCopilotの学習対象から除外することができます。Copilotの学習対象から除外されると、そのファイル内のコードや内容はCopilotが提案に利用するために読み取ったり、学習したりすることがなくなるため、機密情報や個人情報がAIの学習に使用されるリスクが減ります。
たとえば、
従業員の個人データが含まれているファイルや、商用プロジェクトで特許に関連するコードを記載したファイルなど、セキュリティ面でリスクのあるデータを除外できます。
監査ログと使用状況データ
GitHub Copilot Enterpriseでは、使用状況が監査ログとして記録されるので、管理者は以下のような情報を確認できます。これはコンプライアンス対策としても有用なものです。
- 利用者の特定
監査ログには、誰がGitHub Copilot Enterpriseを使用したかが記録されるため、各ユーザーの利用状況を確認できます。 - 利用日時の記録
Copilotを使用した日時が記録され、特定のタイミングでの使用履歴を追跡可能です。 - 生成されたコードの内容
管理者は、各ユーザーがCopilotを通じて生成したコードの内容を確認でき、不適切な利用がないかを監視することができます。
GitHub Copilot Enterpriseの開発環境統合
ここではGitHub Copilot Enterpriseの開発環境についてご説明します。
サポートされるIDEと開発ツール
GitHub Copilot Enterpriseは、以下に挙げるIDEや開発ツールで利用することができます。
- Visual Studio Code
- Visual Studio
- JetBrains IDEs（IntelliJ IDEA、PyCharm、WebStorm、その他JetBrains製品）
Visual Studio Codeでの拡張機能
Visual Studio Codeでは、GitHub Copilot 拡張機能をインストールした後にGitHub Enterpriseアカウントでサインインすることで、以下のような機能を利用できます。
- インテリジェントなコード補完
自然言語の入力からコードの提案を受けたり、次に続くコードを予測して挿入したりできる機能です。 - コード生成とリファクタリング支援
ユーザーが簡単なコメントやプロンプトを指示するだけで、複雑なコードを自動生成したり、既存コードの改善案を提示したりします。 - コメントやドキュメントの作成支援
関数やコードブロックに自動的に説明を付け加え、コードの理解を助ける機能もあります。
JetBrains IDEsとの連携
JetBrains IDE（IntelliJ IDEA、PyCharm、WebStormなど）でも、GitHub Copilot Enterprise専用のプラグインをインストールすることで、
AIによるコード補完や自動生成機能などのGitHub Copilot Enterpriseの機能を利用することができます。
GitHub Copilot Enterpriseの料金体系
GitHub Copilot Enterpriseの料金は、$39/ユーザー/月 です。
※ 他のプランとして、企業向けには「Copilot Business」、個人向けには「無料プラン (Free)」 と「Copilot Pro」が提供されています。
本記事では企業向けプランに焦点を当てるため、個人向けプランの詳細については割愛いたします。 個人向けプランの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
GitHub Copilot BusinessとGitHub Copilot Enterpriseのプランの違い
GitHub Enterprise Cloudに契約している企業は、上記のGitHub Copilot BusinessまたはGitHub Copilot EnterpriseのいずれかのCopilotプランを契約することができます。
そのため、どちらのプランがよいか悩むケースも多いでしょう。
両者の違いは、以下のとおりになります。
※ なお、1つのエンタープライズアカウントで複数の組織に異なるプラン（BusinessまたはEnterprise）を割り当てることもできます。
| 特徴 | GitHub Copilot Business | GitHub Copilot Enterprise |
|---|---|---|
| 主な対象 | 小規模〜中規模のチームや企業 | 大規模な組織、エンタープライズ規模の企業 |
| 料金 | $19/ユーザー/月（エンタープライズアカウントに毎月請求） | $39/ユーザー/月 |
| 基本機能 | AIによるコード補完、エラーメッセージ改善、関数提案 | Copilot Businessの全機能に加え、厳密なセキュリティ管理 |
| セキュリティ | 基本的なセキュリティ機能、SSO（シングルサインオン）対応 | 高度なデータ保護、専用インフラでの処理、データ分離管理 |
| コンプライアンス対応 | 一般的なセキュリティ基準に準拠 | GDPR、ISOなどのコンプライアンス対応 |
| 監査機能 | 基本的な利用レポートの管理が可能 | 監査ログの保持、詳細な利用状況のトラッキング |
| アクセス管理 | チームごとにアクセス管理可能 | 詳細なアクセス権限設定、ファイル除外機能 |
このように、Copilot Businessは主に中小規模のチーム向けの基本的なAI補完機能を提供し、Copilot Enterpriseは大規模組織向けの強化されたセキュリティやコンプライアンス管理機能を備えています。
※本記事に記載されている料金は、2025年1月時点の料金です。変動する可能性があるため、最新の情報については、公式ページで確認してください。
Azure経由での請求
またGitHub Copilot Business及びGitHub Copilot Enterpriseの料金は、Azureサブスクリプションを接続して従量課金制に設定することも可能です。
Azure経由での支払については、こちらの記事で詳しく解説しています。
GitHub料金のAzure支払いとは？対応サービスや設定手順、コスト管理ついて解説
GitHub Copilotの最新機能と将来の動向
GitHub CopilotではさらなるAIによる機能が次々に実現されています。ここでは、そんなGitHub Copilotの最新機能や動向についてご紹介します。
組織専用のファインチューニングモデル
GitHubは、Copilot Enterpriseの機能強化の一環として、2024年9月にファインチューニングモデルの限定パブリックベータを実施しました。現在、一般公開に向けた準備が進められています。
「ファインチューニングモデル」は、組織独自のコードベースやコーディングスタイルに基づいてCopilotの動作を最適化するカスタマイズ機能です。具体的には、組織が保有するコードリポジトリやスタイルガイドを利用してCopilotをトレーニングし、その組織特有のコーディングルールや開発文化に沿った提案が得られるように調整します。
この機能が用いられるようになれば、組織独自のコードベースやコーディングスタイルに基づいたCopilotのカスタマイズが可能となり、組織のニーズに合わせたコード提案を受けることができるようになります。
GitHub Universe 2024で発表された最新のアップデート
2024年10月のGitHub Universeイベントで、GitHubは以下のような機能強化を発表しました。
これらの機能強化は、GitHub Copilot Enterpriseに限らずGitHub Copilotの全ユーザーに対するアップデートとなっています。
1. マルチモデル対応の拡充
これまでGitHub Copilotでは、開発者が複数のAIモデルから選択する機能は提供されていませんでした。
今回のアップデートにより、開発者は複数のAIモデル（AnthropicのClaude 3.5 Sonnet、GoogleのGemini 1.5 Pro、OpenAIのo1-previewなど）から選択することができるようになりました。
2. コードレビュー機能の強化
以前のGitHub Copilotコードレビュー機能では、基本的なエラー検出やコード補完のみが中心で、言語やチームごとのルール適用には限りがありました。今回の強化により、複数言語（C#、Java、JavaScript、Pythonなど）への対応が追加され、レビューの際にチーム独自のルール設定も可能となりました。
3. VS Code向けのマルチファイル編集機能
従来のGitHub Copilotの編集機能では、一度に一つのファイルのみを対象にしてコード補完を提供していました。今回のアップデートで、VS Code向けのマルチファイル編集機能が追加され、複数のファイルを同時に編集できるようになりました。関連ファイルを跨いだ複雑なコード変更が一度に行えるので、作業効率が大幅に向上するでしょう。
まとめ
本記事では、GitHub Copilot Enterpriseについて特徴・導入と設定・活用シナリオ・セキュリティとコンプライアンス・料金体系などについてご紹介しました。
GitHub Copilot Enterpriseは、GitHubが提供するAIを搭載したコーディング支援ツール、GitHub Copilotのエンタープライズ版です。AIを活用して開発生産性を大幅に向上させることで、開発者がより価値の高い業務に集中できる環境を提供してくれます。コードベースに特化したチャット機能、プルリクエストの要約機能、知識ベースとの統合といった高度なAI支援機能により、開発効率が向上し、コード品質も安定することとなるでしょう。
ぜひGitHub Copilot Enterpriseの導入を検討することで、貴社の開発プロセスを進化させ、競争力強化につなげてください。
東京エレクトロンデバイスは GitHub Copilot Enterpriseの導入をサポートしています。ぜひお気軽にご相談ください。
ネクストステップにおすすめ
製造業におけるデータ活用の課題、新しいデータ活用基盤の求められる要件や導入ステップを解説します。