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2024/12/25

Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)

AIと機械学習の関係性とは?ビジネスでの応用事例や実装方法についても解説

AI(人工知能)や機械学習の技術進化が加速し、私たちの生活やビジネスなど、様々な側面に影響を与えています。AIが業務の効率化や迅速な意思決定をサポートするものとなり、「業務でAIを使わない日がない」という企業も増えています。

自社でAIの導入を検討している企業では「AIや機械学習の基本から学びたい」、「AIがどのように業務へ活用できるのかを知りたい」という担当者も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、AIや機械学習の基本概念をおさらいしながら、機械学習のビジネス応用や、具体的な実装方法について解説します。

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「AIに関する学習コストをかけることができない」という場合は、専門知識がなくてもAIや機械学習の機能を利用できる「Azure AI Services」 がおすすめです。Azure AI Servicesについては、概要や機能、ユースケースまでをわかりやすく解説している「はじめてのAI」をご覧ください。

一方、機械学習モデルの構築・運用に専念した企業向けには、「Azure Machine Learning 」が提供されています。サンプルデータがあるのでデータなしでも独自データからモデル構築もできます。詳しくは、「Azure Machine Learningとは?Azure環境で機械学習モデルを独自に構築・運用」をご覧ください。

AI(人工知能)と機械学習の関係性

AI(人工知能)と機械学習の関係性を簡単に表すと、「AIの様々な機能を実現している技術が機械学習」だといえます。AIとは人間のように思考するコンピューター技術全般のことを指し、機械学習はそれを支える具体的な技術の一つなのです。

総務省では、AIと機械学習などの技術の関係性を以下のように表しています。


出典:第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0 総務省

AIという大きな枠組みの中に、機械学習が含まれているというイメージです。AI技術には機械学習以外にもさまざまな種類があり、それぞれ異なる用途や特性を持っています。

機械学習の中には、ディープラーニング(深層学習)という技術が含まれます。ディープラーニングは、多層のニューラルネットワークを活用して、膨大なデータの中から自動的に規則や共通点などを抽出する技術です。ニューラルネットワークの構造を適切に設計することで、後述する「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」といった機械学習の3種類の学習方法を行うことができます。

つまり、ディープラーニングは機械学習に包含されており、機械学習はAIに包含されているという関係性で、データからパターンを学習し、予測や分類を行うAI技術のことを指します。

また、AIが包含する技術には、最適化を行うためのアルゴリズムである「遺伝的アルゴリズム」や、人間が設定したルールに基づいて機械的に処理を実行する「ルールベースシステム」などもあります。

近年では、生成AI(ジェネレーティブAI)も注目されています。生成AIは、テキストや画像、動画や音声などのコンテンツを自らが学習したデータパターンや関係性を活用して生み出すAIです。

生成AIを活用すれば、専門知識がない方でも、その分野のコンテンツを簡単に作成可能です。代表的な生成AIには「ChatGPT」や「Microsoft Copilot」などが挙げられます。

機械学習の他にも、AIを実現する仕組みがあることも覚えておくとよいでしょう。

機械学習の3つの種類

機械学習の方法には、大きく3つの種類があります。ここでは、それぞれの学習方法についてみていきましょう。

教師あり学習

教師あり学習とは、「正解(ラベル)を含んだ学習データ」を与える機械学習方法です。あらかじめ模範解答を付与したデータを学習させるため、学習精度が高く効率も良いというメリットがあります。

例えば、猫と鳥の画像を判別させる学習では、それぞれの画像に「猫のラベル」と「鳥のラベル」を与えて学習させることで、画像の種類を判断できるようになります。天気と売り上げに関する過去のデータを学習させれば、「晴天時と雨天時それぞれの商品売り上げ予測」を行うことも可能です。

教師あり学習で用いられる代表的なアルゴリズムには、「回帰」や「ランダムフォレスト」、「勾配ブースティング」や「ニューラルネットワーク」などが挙げられます。

教師なし学習

教師なし学習とは、「正解(ラベル)の無い学習データ」を与える機械学習方法です。学習データに対する模範解答が無い場合に活用できる学習方法で、データの特徴をおおまかに捉えたデータのパターン分析などに用いられます。

例えば、様々な動物の画像データを分類する場合、学習データには猫や鳥といった動物の種類のラベルは付与されていません。そのため、猫については「4本足で尻尾がある」、鳥については「2本足で羽がある」といった大まかな特徴を捉えてグループ分けします。

教師なし学習の代表的なアルゴリズムには、「クラスタリング」や「主成分分析」などが挙げられます。

強化学習

強化学習とは、コンピューター自身が試行錯誤しながら、報酬を最大化するための最適解を導き出す学習方法です。様々な行動に応じた「報酬」や「ペナルティ」を受け取ることで、どの行動が最適であるか、最も報酬が得られるかを学んでいきます。

例えば、A地点からB地点へ最短での移動を考える場合、信号待ちや渋滞、歩行者などの状況を考慮して、行動を最適化します。「この道を通ると信号が多い」「この道は渋滞しやすい」など、多岐にわたるパターンから最も短時間で移動できる方法を導き出すのです。ゲームにおける戦略にも使用され、囲碁プログラムのAlphaGoのような成功例があります。

「Q学習」や「SARSA」、「モンテカルロ法」などが強化学習の代表的なアルゴリズムです。

機械学習の代表的なタスクとビジネス応用事例

機械学習には様々なタスク(データを使って解決する問題や質問、目標)があります。ここでは、代表的なタスクと、それらタスクをビジネスに活用した応用事例をみていきましょう。

分類

分類とは、入力されたデータがどのカテゴリに属するかを判定するタスクです。事前に定義されたデータを判定基準とします。

例えば、「〇〇のドメインはスパムメールである」という判定基準を設けておくことで、スパムメールの検出に役立ちます。また、特定の商品に対して「過去6か月間の購入回数が〇〇回以下の場合、離脱の可能性が高い」という判定基準で学習モデルを構築し、過去データから顧客を分類すれば、顧客の離脱予測への応用が可能です。

回帰

回帰は、連続値を基に将来の結果を予測するタスクです。入力された複数のデータから、予測される数値を出力します。

商品の季節ごとの売上や需要についての予測を例に挙げます。「過去3年間における1月から12月の気温」と「ドリンク商品の販売数」のデータから、「気温が高い7月から9月は冷たいドリンク商品の販売数が多い」という結果が出れば、今年も「7月から9月は冷たいドリンク商品が売れるだろう」と予測できます。

簡単な例ではありますが、過去の様々なデータから、売上予測や需要予測などを出すことは、幅広い業種のビジネスで応用可能です。

クラスタリング

クラスタリングは、多様なデータから類似した特徴を捉え、クラスタ(グループ)に分けるタスクです。教師なし学習で活用するラベルのないデータを自動的に分類します。

例えば、販売データを元に、購入者の年齢や性別、地域や嗜好をグループ分けするセグメンテーションを行うことで、同じグループに属する顧客に対して似た商品をおすすめ(レコメンド)できるようになります。

このように、顧客のセグメンテーションによるレコメンドシステムや、ターゲットマーケティングに応用できるのがクラスタリングです。

次元削減

次元削除は、高次元(多次元)データを低次元に圧縮するタスクです。重要な情報を残したまま、分析に必要な特徴のみを抽出することで情報を簡略化し、データを把握しやすくします。

高次元データに顧客の「年齢」「性別」「住所」「年収」「購買履歴」など、多くの情報が含まれている場合、全てのデータを利用すると分析が複雑になります。しかし、次元削除タスクにて「年収」と「購買履歴」が特に重要であると判断されれば、複雑なデータをシンプルに解釈することが可能です。

高次元データを2次元または3次元に圧縮して可視化することで、データから新たな発見をするといったマーケティング戦略などに応用できます。

異常検知

異常検知は、様々なデータの中から「通常のデータとは異なるパターン」を見つけるタスクです。異常なデータを早期に発見して対処できます。

例えば製造業では、製造ラインに流れる製品の異常データの発見に活用されています。センサーで温度や振動などのデータを取得することで、他の製品と比べて「振動が異なるもの」や「温度が異常に高いもの」など、通常とは異なる製品を見つけ出します。

近年では、画像や動画、文章などの非構造化データにも、異常検知タスクが適用されるケースが増えています。

画像分類

画像分類は、「この画像は何か」を判別して自動的にグループに分類するタスクです。画像の形状や色、写真に映る人の性別や表情といった特徴を判別できます。

具体例として、検品検査における不良品の自動検出工程で活用されています。正常な製品と不良品の画像を学習させておくことで、凹みや傷のある製品を自動判別するといった品質検査に応用できます。

従来は人の目で行っていた検品作業を自動化できるため、効率化と精度向上が可能です。

物体検出

物体検出は、画像や動画に存在する物体を検出するタスクです。その物体の数や位置を判断できるため「何がどこにあるのか」まで特定できます。

製造業での活用事例として、製造ラインで使われるロボットアームの自動化に役立てられています。流れてくる部品の正確な位置が判断できるため、部品を拾ったり、製品を組み立てたりする工程で活用できるのです。

物体検出も様々な分野・業種で活用されはじめており、自動車の自動運転における歩行者検出などにも応用されています。

予測

予測は、過去や現在のデータを基に未来の結果を予測するタスクです。蓄積したデータから精度の高い予測結果を出力します。

一例として、機械の故障予測などに応用することが可能です。機械に取り付けられたセンサーからのデータや、稼働時間のデータなどを基に、機械が「故障した状態」を学習させます。毎日のデータと照らし合わせることで、機械の故障を予測できるようになります。

精度の高い故障予測を実現することで、リスクの低減や機会損失の防止、安全面の向上にも繋がります。

AI(人工知能)や機械学習を実装していくには?


AIや機械学習を実装する方法には、自社が保有するリソースに応じた選択肢があります。

課題 解決の選択肢
専門知識やリソースが足りない
  • AI開発を得意とする企業に発注する
可能な限り速くAIモデルを使いたい
  • 提供されているAIモデル(SaaS)を活用する
    【例】
    ・Azure AI Services 等
専門知識があり、独自のAIモデルを運用したい
  • 自社モデルを作成する
    【例】
    ・Azure ML 等
  • AIモデルを実装できるプログラミング言語で開発する
    【例】
    ・Python 等
教師データが少ない
  • 教師データの不足を補完できるサービスを利用する
    【例】
    ・Azure ML
    ・Azure Custom Vision
    ・Azure Databricks
    ・Azure Open Datasets
    ・Azure Synapse Analytics 等

ここでは、実装方法について難易度の低い順にみていきましょう。

AI開発を得意とする企業に発注する

AIモデル(機械学習モデル)を自社開発するリソースが無い企業では、AI開発の専門事業者に発注するのが一般的です。専門スキルやITインフラを確保するためには、多くの時間とコストがかかります。AIを使う目的や得たい結果など、要求・要件をしっかりと固めてAI開発を得意とする企業と協力体制を築くことが大切です。

既存のAIモデルを利用する

AIモデルは、様々な形で専門事業者がサービスを提供しています。自社の目的にマッチするAIモデルがある場合は、高度な専門知識がなくてもAIを導入することが可能です。

例えば、製品のラベルに記載されている文字や書類の確認など、目視検査や入力作業を効率化したい場合には、AIで自動化できる「AI-OCR」を導入するとよいでしょう。カメラで撮影した文字や刻印文字などをAIが認識して正確に読み取り、ExcelやWordなどに自動入力してくれます。

AI-OCRについては、「Azure AIを活用したAI-OCRソリューション」にて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

自社でAIモデルを作成する

目的に合ったAIモデルが既存サービスで提供されていない場合には、自社でAIモデルを作成する方法があります。

クラウドサービスを利用してAIモデルを作成する

クラウドサービスを利用することで、提供されているITインフラや機械学習の仕組みを使って、独自のAIモデルを構築・運用できます

代表的なサービスのひとつとして、Microsoft AzureのPaaSである「Azure Machine Learning」や「Azure AI Services」があります。

Azure Machine Learningは、機械学習の実装から運用までのライフサイクルをスムーズに行える仕組みを備えています。GUIが用意されているため、ドラッグ&ドロップで操作可能です。

また、Azure AI Services(旧称:Azure Cognitive Services)では、Azureが提供する画像認証や文字起こしなどの機械学習モデルをWeb APIとして利用できるなど、機械学習の機能をパーツとして自由に使うことができます。

Azure Machine Learningについては、「Azure Machine Learningとは?Azure環境で機械学習モデルを独自に構築・運用」にて紹介しています。また、Cognitive Servicesは「Azure Cognitive Servicesとは?概要やメリット、サービス内容を解説」にて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

Pythonなどのプログラミング言語で実装する

AIモデルを実装する代表的な言語にはPythonがあります。Pythonはシンプルなコードなので理解しやすく、scikit-learnやTensorFlowなどのAIモデルに活用できるライブラリやフレームワークが豊富に取り揃えられた言語です。

ただし、ここまでに紹介した実装方法と比べた場合、課題設定やデータ収集、モデル構築や評価などを独自に行わなければならないため、難易度の高い方法だといえます。

AI(人工知能)の将来性

ビジネスへのAI活用は、急速に広がっています。近年、様々な業種・業界でAIの導入が進み、業務効率化や顧客満足度の向上、売上向上に貢献しているのです。

各業種・業界におけるAI活用については、以下のような例が挙げられます。

業界・業種 AI活用
製造業 ・機械の故障予測
・検品検査の自動化 など
小売業 ・AI搭載のチャットボット
・人員の配置計画 など
物流業 ・配送ルートの最適化
・荷物の仕分けや入出荷 など
建築業 ・資材の自動搬送システム
・現場の危険予知支援 など

AIを活用している企業とそうでない企業では、今後の生産性に大きな差が生まれる可能性があります。将来、企業としての競争力を失わないためにも、早期のAI活用が不可欠だといえるでしょう。

AI・機械学習・ディープラーニングなどの概念を理解して、自社へのAI実装を検討しよう

本記事では、AIと機械学習における基本的な概念の解説と、ビジネスへの応用や将来性などについて解説しました。AIや機械学習の分野は日々進歩しながら、私たちの日常生活や業務を大きく変化させています。

AIや機械学習の基礎を把握することで、自社業務の課題解決方法が見えてくるのではないでしょうか。「AI活用はハードルが高い」という企業は、専門事業者が提供するAI関連サービスを検討すると良いでしょう。

東京エレクトロンデバイスは、専門知識やノウハウが無くてもAI活用が可能な「Azure AI Services」について、その概要や機能、ユースケースを解説したe-bookを無料提供していますので、ぜひご覧ください。

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