Azure導入事例 鹿島建設株式会社 様
鹿島建設「IoT INSIGHT CaaS」で
建設現場の「窓閉め確認作業」効率化を実現
国内大手総合建設会社(スーパーゼネコン)の一角を占める鹿島建設に、マンション建設現場における「窓閉め確認作業」の効率化を目的に、東京エレクトロンデバイス(TED)の「IoT INSIGHT CaaS」を導入頂きました。マンションの各部屋の窓枠に設置したセンサーによって「窓の開閉状況」を検知・通知することで、すべて現場担当者の目視に頼っていた従来の作業負荷を大幅に軽減。窓の閉め忘れによる悪天候時の品質不具合防止、現場担当者の労働時間短縮といった効果が得られています。
鹿島建設株式会社 横浜支店
建設部 建築工事管理グループ長
沖塩 政志氏
鹿島建設株式会社 横浜支店
建設部 建築工事管理グループ
現場先進ICT導入支援チーム
課長代理
鹿田 康晴氏
建築現場を悩ます「窓閉め確認作業」の負担
鹿島建設は、江戸時代末期の1840年(天保11年)に創業した日本を代表する大手総合建設会社(スーパーゼネコン)です。明治時代~戦前は横浜や東京の西洋館建築、丹那トンネルをはじめとする鉄道建設・土木工事で名を馳せ、戦後は日本初の超高層ビルである霞が関ビルや新宿副都心の超高層ビル群、青函トンネル・本州四国連絡橋・東京駅丸の内駅舎復元など、日本を代表する多くの歴史的建造物の建築・土木工事を手掛けてきました。現在は日本国内だけでなく、海外や宇宙にも事業の幅を拡げています。
全国12カ所の支店のうち神奈川・静岡エリアの事業を担当する横浜支店は常時数十以上の建築工事現場が稼働するという、同社のなかでも指折りの売上規模を誇る主要な事業拠点の一つです。そのような横浜支店で主に現場の業務支援を担当する建設部 建築工事管理グループはこのほど、横浜市戸塚区のマンション建築工事現場に、ノーコードでセンサーデータの収集、可視化ができるクラウドIoTサービス「IoT INSIGHT CaaS」を導入しました。
「マンションやビルの建築工事現場では、毎日の終業時に建物の窓閉め確認作業を必ず行っています。とくに内装工事中は仕上げ材料(内装材、塗料、接着剤等)から揮発性物質が発生するため、換気を必要とし、作業中は窓を開けて終業時に窓を閉めることにしています。窓の閉め忘れがあると、夜間に雨風が屋内に吹き込んで内装が台無しになるといった不具合が起きるおそれもあります。そうした不具合を回避するためにも、一日の作業終了後に現場の責任者がすべての部屋を回って窓が閉まっているかどうかを目視で確認していました」(沖塩氏)
この窓閉め確認作業は、高層の建物やサッシ取り付け後は特に負担がかかっていました。数百戸以上のマンションではその作業だけで1時間以上も要するため、現場の管理監督者にとって大きな悩みの種になっていました。
運用しやすさを決め手にIoT INSIGHT CaaSを選定
このような窓閉め確認作業の課題を解決するために、窓の開け閉め状況を遠隔でリアルタイムに検知・確認できる仕組みの導入を検討することにしました。
「まずは窓の開け閉め状況をリアルタイムに検知・確認できるIoTシステムを調べて複数社の導入候補を挙げ、検討作業を行いました。比較検討の結果、運用しやすいクラウドサービスとして提供されていること、窓の開け閉め状況がスマートフォンの画面で確認できること、ダッシュボード画面をノーコードで容易に開発できること、窓センサーのデータを収集しクラウドに送信するためのゲートウェイ(現場の屋外に設置)の台数が少なくて済むこと、ローコストであることが決め手となり、TEDのIoT INSIGHT CaaSを選定することにしました。」(鹿田氏)
「IoT INSIGHT CaaSで使用するCassia Bluetoothゲートウェイは、屋外設置ができる防じん対応で、通信距離が長いうえ1台あたり収集できる開閉センサー情報も多く、電源確保が難しい建築工事現場では設置台数が少ないのは助かりました。」(鹿田氏)
手始めに今回のマンション建築工事現場に導入することにした鹿島建設では、TEDの協力を得て建物内各部屋の窓枠に開閉センサーを、建物外周にセンサーデータを取得し、クラウドに送信するための複数台のCassia Bluetoothゲートウェイを設置。センサーデータをゲートウェイ経由でクラウド環境(Microsoft Azure)に蓄積・可視化・分析するIoT INSIGHT CaaSを活用した窓閉め確認の仕組みを構築しました。
「今回の現場は2棟のマンションを建築していますが、今回導入した仕組みの効果を確認するために、IoT INSIGHT CaaSを1棟だけ適用し、もう1棟と比較しました。この結果、2棟の日々の確認時間に50分以上の差が出ました。
またCaaS導入後は、携帯の画面上(ダッシュボード)で窓の開け閉め状況がリアルタイムに確認できるようになったほか、開いたままの窓を検知した際にMicrosoft Teamsへ通知(1日に16:00、17:00の2回通知)して素早く対応することが可能になりました。」(鹿田氏)
他の現場も担当したことのある若手社員からも「窓閉め確認作業が省力化されると、本来の仕事に集中できるので良いですね。」と高評価で、社員のモチベーションの面でも効果があったそうです。
想定した効果を実感、「2024年問題」の解決策としても期待
今回のマンション建築工事現場では、約半年間にわたってIoT INSIGHT CaaSを運用しましたが、窓閉め確認作業を効率化して現場の担当者の負担を軽減するという目的は達成できたといいます。
「運用中は、現場の要請に従ってダッシュボード画面の構成を修正することもありましたが、ノーコードで簡単に手直しできるので運用負荷がかかることはありませんでした。従来のように現場の担当者が目視で確認する方法と比べると導入コストはありますが、作業にかかる人力の削減、社員のモチベーション、確認ミスによる不具合の防止という観点で見ると、一定以上の効果が得られたと考えています」(鹿田氏)
建築工事管理グループを統括する沖塩氏は、「2024年問題」への対策としてもIoT INSIGHT CaaSは有効だと話します。
「私たち建設業界は労働人口減少に伴う人材不足によって長時間労働が常態化しており、2024年4月から建設業への適用が始まる働き方改革関連法を遵守するためにも、労働時間短縮は解決すべき喫緊の課題です。窓閉め確認作業の効率化はまさに、建築工事現場の労働時間短縮を可能にする有用な課題解決策だと認識しています。」(沖塩氏)
鹿島建設では今回の導入事例を参考に、今後は他の建築工事現場への適用も視野に入れています。すでに横浜支店以外の他支店からも問い合わせが寄せられているそうです。
導入したサービス
これまでの課題
- 窓の開け閉め状況の確認に各階各部屋に直接行って目視で確認する必要があった
- 毎日の確認、悪天候時の再確認など現場担当者の負荷が大きかった
- 工事現場では電源確保が難しく、かつシステム導入にコストはかけづらい
「IoT INSIGHT CaaS」で得られた効果
- 携帯画面でリアルタイムに開閉確認ができ、確認時間が1/3以下に軽減
- 省力化されることで社員のモチベーションが高くなった
- 少ないゲートウェイの台数で全室の確認ができ、工事期間のみの利用もできる
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