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2025/5/13

Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)

AI活用で加速するDX推進!メリットや事例、導入ステップを解説

新型コロナウイルス感染拡大などさまざまな要因でテレワークが普及した現在、業務効率化や働き方改革がより注目されるようになりました。

このような背景から、企業は生産性を向上し競争力を高めるためにDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が欠かせないものとなっています。

また、2022年ごろからはChatGPTなどの生成AIの登場により、「AI」の認知も広がり身近なものになりました。技術進化のスピードが速まる中、それに対応するために多くの企業がDX化の手段としてAI導入を進めています。

では、企業経営や業務のDX推進においてAI活用で実現できることとは何でしょうか。

本記事では、AI活用で何ができるのか、AIを活用したDX推進のメリットや事例、AI導入のステップを解説します。

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AIはDXの有効手段

昨今、AIはDX推進の手段として欠かせない技術になっています。しかし「AIを導入することがDXを推進すること」ではありません。ここでは、AIとDXの関係性や、AI活用で実現できることについて見ていきましょう。

DXの目的とAIの関係性

DX推進とAI導入において大切なのは、DXとAIの目的と関係性を理解しておくことです。

そもそもDXとは、IT・ICTを活用して、新たな価値を創出することです。経済産業省において以下のように定義されています。

  • デジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと。
  • また、そのためにビジネスモデルや企業文化等の変革に取り組むことが重要となる。

引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード 実践の手引(要約版)

この定義に当てはめると、DXの目的は、業務の効率化や生産性の向上によって企業が競争力を高め、新たな成長機会やビジネスモデルに取り組むことだといえます。

そしてAIは、DXの目的を実現するための一つの重要なデジタル技術でありツールです。例えば、データ処理の自動化をすることで業務時間を短縮したり、データ分析をして顧客のニーズに最適なサービスを生み出したりすることに役立ちます。

AIの導入が目的になってしまうと、DXが思うように進まなくなる可能性が高まります。「AIはDXを進めるために使う技術」だと意識し、適切な場面で活用することで、DX推進がよりスムーズになるでしょう。

AI活用で実現できること

AIを適切に活用することで、業務改善や生産性の向上を実現します。分かりやすい活用方法としては、「コスト削減」や「品質の均一化」、「付加価値の創出」が挙げられるでしょう。

例えば、製造業における検査工程などの業務をAIで自動化することで、大幅に工数を削減できます。これにより、効率化とリソースの最適化が実現し、人件費をはじめとしたコスト削減につながるでしょう。

また、人間が行う作業はどうしてもミスや漏れが発生してしまいます。AIを活用することで、これらヒューマンエラーを低減し、製品やサービスの品質を一定に保つことが期待できます。

さらに、AIは付加価値の創出にも役立ちます。

例えば、AIを使ったチャットボットを活用すれば、営業時間外の問い合わせ対応が可能です。「分からないことをいつでも解決できる」というサービスへの安心感が生まれ、顧客満足度の向上につながります。

くわえて、顧客からの問い合わせをAIに任せることで、人的リソースに余裕ができるため、顧客一人ひとりに合わせたソリューションの提供など、新しいサービス創造のリソースに割り当てることもできるでしょう。

AIでどんな技術を導入できるのか

DX推進には、業務効率化や新たな価値の創出が必要ですが、その実現は簡単ではありません。

例えば、膨大なデータの処理を迅速に行うには、専門知識やノウハウ、リソース不足などが課題になります。しかし、AIを活用することで、これら課題のハードルを下げることができるのです。

ここでは、DX推進を助けるAI技術について見ていきましょう。

言語生成

顧客体験を向上させることは、DX推進において重要です。顧客が何を求めているのかを迅速かつ的確に理解するためには、サービスや製品の説明、FAQの整備が欠かせません。

しかし、テキストの作成や更新を持続的に行うには多くのリソースが必要です。特にサービスや製品の種類が多い企業にとっては大きな業務負荷となります。

AIの言語生成技術は、このような課題を解決します。例えば、商品説明の生成をAIで自動化すれば、作業時間を大幅に削減できます。また、顧客からの問い合わせ内容の分析とFAQを生成するAIを構築すれば、FAQを自動的に整備し続けられるでしょう。

AIを活用したテキスト生成は、マーケティングと顧客対応の双方でDX化を進めるツールになるのです。

画像生成

画像データの解析や活用を人間が行うと多くの労力や時間がかかります。また、精度にも限界があるでしょう。そのため、DX推進においての重要なポイントになります。

AIの画像認識を含めた画像生成技術は、これら課題の解決につながります。例えば、医療現場では画像診断の補助にAIが活用されはじめています。異常を短時間かつ高精度に検出できるため、人間が一から診断するよりも大幅な効率化が期待できます。

また、製造業でも画像技術に関するAIはDX推進を加速させます。不良品を検知するAIシステムは、人間の目による検品よりも精度が高く、品質管理の大幅な効率化を実現できるのです。

AIの画像関連技術は、業務の効率化だけではなく、DX化で期待される精度の向上も可能にします。

音声認識

議事録作成などにおける文字起こしや資料作成の時間短縮は、DX推進におけるポイントの一つだと言えます。

会議の録音やオンライン会議の録画データからの議事録作成は、時間と手間を取られる業務の一つです。重要な情報の記録ではあるのですが、効率化したい作業でもあります。

AIの音声認識技術は、これら課題の解決にも役立ちます。例えば、対面での会議やオンライン会議の録音の文字起こしが可能です。音源を聞きながら人間が文字に起こす場合、2時間の会議ならば文字起こしだけでそれ以上の時間を必要とします。しかし、AIが自動的に文字起こしをすることで、大幅な時間短縮につながるのです。

また、文字に起こした内容を議事録のフォーマットに落とし込むシステムが整えば、従来の手作業の大部分を削減して効率化できるでしょう。

AIの音声認識技術は、DX化における業務効率化を実現して生産性を大きく向上します。

数値分析・シミュレーション

データ活用は、マーケティングや企業の意思決定に直結するもので、DX推進の中でも重要なポイントです。人間が膨大なデータを短時間で正確に分析することは難しいため、多くの企業で効率化が求められている分野でもあります。

AIによる数値分析やシミュレーションは、この課題を解決するのに最適だと言えるでしょう。例えば、サービスや商品の需要予測にAIを導入する場合です。過去や現在のデータを基に分析した結果から、生産スケジュールや在庫管理を迅速・正確に行えます。

また、今後の需要におけるさまざまなシナリオを短時間でシミュレーションして検証できるため、リスクを抑えた意思決定が実現可能です。

AIによるデータ処理の効率化はリソースの最適化につながり、DX化における生産性向上に大きな影響を与えます。

AIを活用したDX推進のメリット

AIの活用は、DX推進における企業のさまざまな問題を解決します。ここでは、AI活用で得られる具体的なメリットについて見ていきましょう。

これまでできなかったデータ分析が可能になる

多くの企業では、これまでに蓄積された大量のデータを保有していますが、有効活用できていない企業も少なくありません。それは、高度な分析ツールの導入・運用コストの高さもありますが、特にデータ分析のために必要なデータサイエンティストの人材不足が要因として挙げられるでしょう。

DX推進にAIを活用したデータ分析を取り入れることで、高度な専門知識を持つ人材がいない場合でも、膨大なデータの分析が可能になるというメリットがあります。

例えば、顧客の行動データや購買履歴を分析することで、販売戦略の改善を迅速に行えるでしょう。また、AIは大量のデータの中から複雑なパターンを見つけ出せるため、高度なインサイトを得られます。これにより市場変化にいち早く対応でき、素早い意思決定が可能な仕組みを構築できます。

カスタマーサービスの対応範囲を広げられる

顧客対応のスピードや質の向上は、DX推進において盛り込むべき重要な課題の一つです。しかし、カスタマーサービスの対応範囲を広げる24時間体制や多言語対応などは、多くの企業にとって難しい問題でしょう。

そこで活用したいのがAIです。AIは、これらの課題に対するハードルを大きく下げられるメリットがあります。

例えば、前述したようにAIのチャットボットを導入することで、24時間365日の顧客対応が可能になります。また、AIならば顧客が話す言語を自動的に認識して応答できるため、多言語化対応も実現できるでしょう。

対応範囲を広げられる上、人材や人件費を確保する必要がないこともメリットの一つだと言えます。

作業系のデスクワークを自動化できる

多くの企業では、エクセル資料やレポート作成などの定型的な作業があります。これらもDX推進によって効率化を図るべき業務です。

AI活用は、反復作業を自動化できるメリットがあります。近年ではAIとRPA(Robotic Process Automation)を組み合わせたシステムも登場しており、書類のデータを読み取って資料作成を自動化することも可能になりました。

例えば、AIとRPAを組み合わせて、請求書や在庫管理業務を自動化すれば、デスクワークを効率化でき、大幅な工数削減ができます。手作業を省くことができるため、ヒューマンエラーの低減にもつながります。日々の業務が簡略化され、書類作成におけるミスや転記漏れも解消されることで、生産性の向上も実現可能です。

AI活用でDX推進した事例


ここでは、AI活用でDX促進に成功した事例を紹介します。

工事材料品の管理業務をAIで自動化

工事材料品の管理業務における課題を、DXの内製化で解決した事例です。

株式会社エヌ・ティ・ティ エムイーでは、AIを用いた画像判定システムを導入して、工事材料品の管理業務を自動化しました。

従来は、現場作業者が工事の際に持ち出す部材を、作業者自身が目視で確認し、数量を紙に記入して管理していました。物品管理者は約160種類の工事物品を目視確認して、在庫量をチェックしなければなりませんでした。また、欠品を避けるための在庫過多や、在庫管理と発注作業の稼働負担が大きいことも課題です。

そこで、写真から工事材料を識別して、必要な材料をリアルタイムで把握できるAIシステムを導入。物体検出AIや画像分類AIを併用した判別精度の高いシステムです。

これにより、従来の業務フローと比較して、作業時間を半分以下に短縮しました。また、材料の在庫管理コスト削減をはじめとした業務フロー全体で、約82%の稼働削減が想定されています。

株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー 様の導入事例について詳しくはこちら

住宅ローンに必要な書類をAIでデータ化

必要書類をAIでデータ化し、75%の工数削減を実現した事例です。

iYell株式会社では、AIとRPAを組み合わせて、住宅ローンの審査や借り入れに必要な書類をAIで読み取り、ファイル操作やデータ作成の自動化を実現しました。

従来は、住宅ローンに必要なさまざまな書類を、スタッフが目視でチェックしていました。その数は月数千枚にもなります。画像やファイルに目を通し、ファイル名の変更や必要なデータのテキスト化なども手作業です。

また、人件費を考慮してデータ化を諦めていた情報があることや、データ化に複数営業日かかることも課題でした。

そこで、顧客から送られてくる書類や画像の個人情報や文書分類をAIで自動化するシステムを導入。人名や住所の読み取りから、ファイル操作やデータ作成までを自動化したのです。

これにより、人間の業務はシステムの作業チェックのみとなったため、事業成長をしても人材を増やす必要はなくなりました。従来、複数のメンバーで行っていた作業は1名での処理が可能となり、従来の作業と比べ作業工数は75%削減されています。また、安価なランニングコストでデータを適切に保存でき、即日でのデータ化も可能になりました。

iYell株式会社 様の導入事例について詳しくはこちら

架空送電線の点検業務をAIで効率化

送電線のメンテナスにAIを活用して、コストを50%以上削減した事例です。

東京電力パワーグリッド株式会社では、AIを活用した架空送電線画像診断システムを導入することで、点検業務の効率化に成功しました。

従来は、架空送電線の点検を目視で行っており、点検に膨大な作業時間を要していました。ヘリコプターで空撮した映像を作業員が一つひとつ確認し、その作業はのべ1,330時間(2016年の実績)に達しています。また、長時間作業による疲労や集中力の低下により、異常を見落とす懸念もありました。

そこで、画像から異常・正常を判断するAIシステムを導入。これにより、点検にかかっていた時間を50%以上削減することに成功しました。また、ヒューマンエラーによる異常の見落とし防止も実現し、点検作業の効率化と平準化を両立しています。

東京電力パワーグリッド株式会社 様の導入事例について詳しくはこちら

東京エレクトロンデバイスが支援した企業様の3つの事例を紹介しました。弊社では、DX推進のためのAI活用・導入による業務効率化支援を行っています。

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DX推進のためのAI導入ステップ

DX推進にAIを活用するには、段階的に進めていくことが大切です。ここでは、AI導入を成功させるための3つのステップを見ていきましょう。

ステップ1:課題と数値目標の設定

DX推進におけるAI導入には、解決したい課題を具体的に洗い出すことから始めます。

例えば、業務の効率化を目指すならば、まずは非効率な作業を明確にします。現状の工数を数値に落とし込み、その上で数値目標を掲げましょう。「10時間のデータ集計作業を30%削減する」など、具体的なゴールを設定することで、必要なデータが何なのか、どのように収集するのかを判断できるようになります。

ステップ2:適切なAIサービスの選定

課題と数値目標が定まれば、利用するAIサービスを選定しやすくなります。

例えば、製品の異常検出ならば画像認識ができるAIソリューションの導入を検討しましょう。自社で1からAIを開発しようとすると、多大なコストや専門知識などが必要となり、導入ハードルが高くなります。そのため、基本的には既存のAIサービスを活用するのが現実的です。

また、導入するAIサービスを決定した後は、まずは試験導入を通じて、自社の業務に適合するのか、課題解決の目標を達成できるのかなどの検証を行いましょう。その際に、AIができることを考慮しながら、人間とAIの役割分担を明確にしておくことで、効率的な運用体制が構築できます。

ステップ3:運用と改善

AIを導入して稼働が始まった後は、運用結果を定期的にチェックし、設定した目標の達成度を評価します。

例えば、目標にしていた「作業時間30%削減」がどの程度達成されているのかを確認しましょう。

また、作業が効率化したことによってコスト削減効果が出ていたり、従業員の作業が軽減されていたりする場合は、それがどの程度の効果なのかを数値化します。場合によっては、導入時には予想できなかった新たな課題が出てくることもあるでしょう。あるいは、ある程度の汎用性が認められ、AIの活用範囲を広げる事ができるかもしれません。

運用しながら評価と改善を繰り返し、AI活用の効果を最大限に発揮させることで、DX推進を加速させていきましょう。

AI導入にあたり押さえておくべき注意点

AIの導入においては、その効果だけではなく、リスクを最小限に抑えることも重要です。ここでは、AI導入の注意点について見ていきましょう。

セキュリティリテラシーを向上させる

AIを運用するためには、データ管理に対するセキュリティ意識をはじめとしたセキュリティリテラシーの向上が必要です。

まず、高品質なデータを収集・整備してAIに学習させなければなりません。信頼性の低いデータを使うと、AIが誤ったデータを学習してしまう可能性があるからです。

例えば、AIが判断を誤り、本来はアクセスすべきでないユーザーへ、機密情報へのアクセス権限を与えてしまうかもしれません。これは、重大なセキュリティリスクにつながります。また、AIの機械学習に用いるデータには、機密情報や個人情報を含めないように注意する必要があります。

セキュリティリテラシーを高め、AI活用におけるリスクをできる限り軽減しましょう。

AI利用の適切な管理体制の構築

AIを利用する際には、組織全体での管理体制を整備しましょう。AIの利用範囲や運用方法を明確化したガイドラインを策定しておくことで、「なぜAIを利用するのか」「AIをどのように活用するのか」といった共通認識を持たせることができます。

また、AIが行う判断過程と結果を明確にする仕組みの整備も必要です。これは、AIが出した結論によって、意図せぬ結果を招いた場合へのリスク管理です。

仮に、AIを活用した仕組みの中から情報漏えいなどの問題が発生した場合、その責任の所在を明確にする必要があります。AI利用が適切に管理されていれば、「信頼性の低いデータで機械学習を行ったため、アクセス権限の付与に判断ミスが起こった」など、原因を特定することができるでしょう。

AI活用によるDX推進のポイントは適切なチーム編成とパートナー選定

DX推進におけるAIの活用には、適切なチーム編成と、AI導入を支援してくれるパートナーが欠かせません。DX推進は、業務効率化や生産性向上するだけではなく、ビジネスモデルを変革し、ユーザー体験を向上させる取り組みです。そのため、強力な推進力が求められます。

しかし、DX担当者のAI活用における理解が十分でなかったり、部署間や経営陣との意識連携ができていなかったりするケースが少なくありません。AI導入には専門性の高い知識と実行力を兼ね備えたチーム構築が不可欠です。もし社内だけで必要なリソースが整わない場合には、専門事業者をパートナーとして連携しましょう。

パートナー選定については、AI導入の豊富な実績があることや、DX推進を伴走してくれる力強いパートナーを見極めることが、AI活用を成功させる大きなポイントになります。

東京エレクトロンデバイスでは、Azure AIを活用したAI-OCRソリューションを提供しています。例えば、人間に頼っていたラベルの目視検査や入力作業をAIで自動化することも可能です。製造業の現場のDX推進を支援いたします。AI導入をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

AI-OCRソリューションについては、「Azure AIを活用したAI-OCRソリューション」をご覧ください。

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