Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)
ICTとは?ITやIoTとの違いやICTの活用例を解説
近年、「IT」よりも、「ICT」という言葉が積極的に使われるようになってきました。ICTとITの違いが今一つ区別できないという人も多いのではないでしょうか。また、ICTが広く活用されるようになり、最近の企業システムでは「IoT」という言葉も見られるようになってきました。本コラムでは、ICTとITやIoTの違いと関係性、そしてICTの活用例までを解説します。
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ICTとは
まず、ICTとは何かを確認していきましょう。
ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、日本語では「情報通信技術」と訳されます。
私たちは、スマートフォンでの同僚とのコミュニケーションや外出先での書類作成と送付などで意識せずにICTを使っています。ICTは、デジタル化された情報の通信技術であり、インターネットなどを経由して人と人とをつなぐ役割を果たしています。
近年では、日本政府をはじめ、国際的にも「ICT」と表現することがほとんどです。例えば、総務省のホームページやダウンロード資料を見ても「ICT」が使われています。
ICTは、IoTやAI技術が活躍する社会を表す「Society 5.0」に位置します。「Society」は内閣府が定義する「社会」を指すもので、以下のように定義されています。
- Society 1.0:狩猟社会
- Society 2.0:農耕社会
- Society 3.0:工業社会
- Society 4.0:情報社会
ITが主流だった時代はSociety 4.0でした。そして、ITが通信技術を利用して「つながる」現代社会がSociety5.0と定義されています。Society4.0では人と人との知識や情報の共有といった課題が新たに発生しました。Society5.0ではこの課題を、人とデジタル情報がつながることで解決します。
ICT・IT・IoTの違い
次は、「IT」や「IoT」といった言葉と「ICT」との違いを確認していきましょう。
ITとICTの違い
「IT」は、以前からよく使われてきた言葉です。現在主流の「ICT」と何が違うのでしょうか。
ITは「Information Technology」の略称で、日本語では「情報技術」と訳されます。
これまでデジタル化されたデータを扱う技術やモノを「IT」と表現することが主流でした。しかし、近年では、デジタルデータの通信量が膨大になったため、情報通信技術を表す「ICT」に移行しつつあります。
2020年10月時点では、「ITエンジニア」を「ICTエンジニア」と明確に区別して表現するメディアはまだ多くありません。「アナログ情報をデジタル化するエンジニア」だった人がそのままICTの領域(通信技術)もカバーすることが多く、ITエンジニアという表現が定着したのでしょう。最近では、少しずつですが「ICTエンジニア」という表現も見かけるようになってきました。
このように、ITとICTはほぼ同じように使われることが多く、使い方が明確に定義されているわけではありません。両者の違いをはっきりと区別するならば、以下のようにイメージすると分かりやすいでしょう。
また、先の「Society」の変化に伴って、ITがICTへ移行しているとも理解できます。
IoTとICTの違い
「IoT」は、近年よく見られるようになった言葉です。「ICT」とは何が違うのでしょうか。
IoTとは「Internet of Things」の略称で、「モノのインターネット」と訳されます。
「ICT」と「IoT」の違いは、以下のようにイメージすると分かりやすいでしょう。
IoTでは、パソコンやスマートフォンだけでなく、家電をはじめとした身の回りのデバイスや自動車、さらに、それらを作る工場の機器などもインターネットに接続されます。
モノがインターネットに接続されることにより、インターネットを通してモノが持つデータの送受信ができるようになります。これにより、遠隔地からモノの状態が細かく管理できたり、モノの制御ができるようになったりします。さらに一歩進めると、制御・指示するモノと制御されて動くモノがインターネットでつながることで、人が介在しないM2M(Machine to Machine、機械と機械)の世界の実現も可能です。
このようにIoTにおいてデジタル情報を通信する技術であるICTは、IoTの普及に欠かせない技術だということが分かります。そして、モノ同士がインターネットを介してつながることにより、モノを所有する(利用する)私たち人間同士もつながるのです。
なおIoTの詳細については「IoTとは?モノとインターネットの全体像や活用シーンを分かりやすく解説」を参照してください。また、IoTでも重要なセキュリティについては「クラウド時代に求められるIoTのセキュリティ対策とは?」で解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
ICTの活用例
それでは、ICTの実際の活用事例を見ていきましょう。
ICTはすでに、インターネット検索やSNSのみならず、ビジネスシーンでも広く活用されています。
ICTを活用した教育
ICTの活用事例として、教育現場が挙げられます。日本国内でもICTを使った教育が広く導入され始めています。
パソコンやタブレットといったIT機器を利用してデジタルデータの教科書を使ったり、画像や動画を使った説明が授業で取り入れられています。
分からないことを先生に質問するのではなく、インターネット検索を使って答えを得る授業は「ICTを使って調べる能力」を培います。また、作成したパワーポイントやPDFを共有しながら説明をする授業は、将来のビジネス実務でも生きる教育だといえるでしょう。
ICTを活用した医療
ICTは、医療分野での活用も期待されています。
例えば、離れた場所にいる患者の診療(オンライン診療)が可能になります。これにより、通院できない患者の自宅と病院をつないだ在宅診療の拡大や、首都圏から離島などの医療過疎地域の診察や服薬指導などを行う遠隔医療が実現できます。
昨今のコロナ禍では、罹患した患者が来院したときに起こり得るクラスター(集団感染)を避ける手段にもなります。また、医療従事者が患者に対面で接するときの感染リスクの回避にもつながります。
テレワーク
コロナ禍で多くの企業が本格導入したテレワークは、ICT実現した働き方改革の1つです。
データをオンプレミスサーバーやクラウドに集約して格納すれば、従業員間での連携が必要な業務を含め、ほとんどの業務がオンラインで進められます。また、会議室での会議をWeb会議に移行することで、昨今のソーシャルディスタンスが必要な労働環境の整備につながります。このようにテレワークを実現するICTはさまざまなビジネスシーンで活用の幅を広げているのです。
テレワークでほとんどの業務が完結できる業種ではオフィスレス化も進みつつあり、業務のために物理的に人が集まるという働き方や企業のあり方すらも変えようとしています。
IoT
先述したモノとモノとがつながるIoTは、ICTの活用例の一つでもあります。
IoTについては「IoTとは?モノとインターネットの全体像や活用シーンを分かりやすく解説」を参照してください。また、製造業におけるIoTの活用例は「製造業でのIoT活用とは?導入のメリットや事例を解説」でご紹介していますのでこちらもご参照ください。
まとめ
ICTは、デジタルデータを持つあらゆるモノや人が通信でつながる現代において、必要不可欠な技術です。
また、活用例の一つであるIoTは、製造業の現場などに入りはじめており、今後の普及が見込まれています。IoTで様々な機器を遠隔操作できるようになると、実現が難しいと言われている製造業現場のテレワークも、将来は可能になるかもしれません。