Microsoft Azureコラム
Writer:手戸 蒼唯(てど あおい)
ICT(情報通信技術)とは?ITやIoTとの違いや最新動向・政府戦略・AI活用まで徹底解説
デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現代社会において、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)は、ビジネスや私たちの生活に不可欠な存在となっています。本記事では、ICTの基本的な概念から最新動向、さらには政府のデジタル戦略やAI活用で生まれる新たな可能性、産業別の活用事例まで、幅広く解説します。
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ICTの基礎知識と最新動向
ICTの基本的な概念から、現代社会での重要性、そして未来社会における役割まで、基礎から最新動向までを解説します。
ICTの定義とは
ICTとは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略称です。情報の収集・処理・発信などの技術に加え、通信ネットワークを活用してデータやシステムを共有・活用する技術の総称です。スマートフォンでのビデオ会議やクラウドサービスを使った協働作業など、現代社会のあらゆる場面でICTが活用されています。
ICTが注目される背景
2020年以降のパンデミックを契機に、デジタル化の重要性が世界的に再認識されました。テレワークやオンライン教育の普及、さらにはデジタル行政サービスの拡大など、ICTは社会インフラとしての役割を強めています。2022年は578.9兆円(前年比19.8%増)、2023年は657.3兆円(前年比10.3%増)と大きく増加し、2024年は700兆円まで拡大すると予測されています。このようにICTは、社会のデジタル化を支える基盤技術として、今後さらなる成長が期待されています。
Society 5.0時代におけるICTの位置づけ
ICTは、IoTやAI技術が活躍する社会を表す「Society 5.0」に位置します。IoTやAIなどのICTを駆使して、経済発展と社会課題の解決を両立する人間中心の社会を目指しています。
なお「Society」は内閣府が定義する「社会」を指すもので、以下のように定義されています。
- Society 1.0:狩猟社会
- Society 2.0:農耕社会
- Society 3.0:工業社会
- Society 4.0:情報社会
ITが主流だった時代はSociety 4.0でした。そして、ITが通信技術を利用して「つながる」現代社会がSociety5.0と定義されています。Society4.0では人と人との知識や情報の共有といった課題が新たに発生しました。Society5.0ではこの課題を、人とデジタル情報がつながることで解決します。
DXとICTの関係性
ICTは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための基盤技術であり、DXの成否を左右する重要な要素です。DXとは、単なるデジタル化ではなく、ICTの活用によってビジネスモデルや組織文化を変革し、競争力を高めていく取り組みです。例えば、製造業では工場のスマート化によって生産性を向上させ、小売業では実店舗とECの融合によって顧客体験を革新しています。
近年では、こうしたICTを活用してビジネスモデルや業務プロセスの変革を進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が高まっています。
デジタル変革(DX)を加速する「Microsoft Azure」は多様なクラウドサービスを提供しています。詳しくは「注目のAzureサービス」をご覧ください。
ICTとIT・IoTの違いや5G・AIとの関係
ICTと関連する様々な技術について、その違いや関係性を整理し、それぞれの特徴と役割を明確にします。
ITとICTの違い
情報技術(IT)と情報通信技術(ICT)の違いを理解し、それぞれの特徴と使い分けについて説明します。
ITとICTの技術的な違いと定義
ITは「Information Technology(情報技術)」略称で、主にデータの処理や管理に関する技術を表します。一方、ICTはコミュニケーションの要素が加わり、ネットワークを通じた情報の共有や活用に重点を置いています。
これまでデジタル化されたデータを扱う技術やモノを「IT」と表現することが主流でした。しかし、近年では、デジタルデータの通信量が膨大になったため、情報通信技術を表す「ICT」に移行しつつあります。
「ITエンジニア」を「ICTエンジニア」と明確に区別して表現するメディアはまだ多くありません。「アナログ情報をデジタル化するエンジニア」だった人がそのままICTの領域(通信技術)もカバーすることが多く、ITエンジニアという表現が定着したのでしょう。最近では、少しずつですが「ICTエンジニア」という表現も見かけるようになってきました。
このように、ITとICTはほぼ同じように使われることが多く、使い方が明確に定義されているわけではありません。両者の違いをはっきりと区別するならば、以下のようにイメージすると分かりやすいでしょう。

各省庁での使い分け方
日本政府の各省庁では、「ICT」という用語が標準的に使用されています。総務省が公表する「ICT国際競争力指標」では、今後の重点施策として「Beyond 5G」の研究開発や、総合的なICT政策の推進のための取組として「デジタル田園都市国家構想」の推進を掲げています。なお5Gの次世代の情報通信インフラ「Beyond 5G(6G)」は、2030年代(令和12年)にはあらゆる産業や社会活動の基盤となることが見込まれています。
グローバルスタンダードとしてのICT
国際電気通信連合(ITU)やOECDなどの国際機関でも「ICT」が標準用語として採用されており、デジタル社会における共通言語となっています。
IoTとICTの関係
IoTとICTは密接に関連する技術です。両者の関係性や、IoTを支えるICTの役割について解説します。
IoTの基本概念とIoTとICTの違い
IoT(Internet of Things)は、様々なモノがインターネットにつながる仕組みを指します。工場の製造設備や農業用センサー、スマート家電など、あらゆるモノがネットワークに接続され、データを収集・活用することが可能になっています。
また「ICT」と「IoT」の違いは、以下のようにイメージすると分かりやすいでしょう。

IoTやIoTデバイスについて詳しくは「IoTとは何か?基本的な構成から導入における課題や人材育成までを網羅的に解説」「IoTデバイスとは?種類や活用事例を分かりやすく解説」をご覧ください。
ICTがIoTを支える仕組み
ICTは、IoTの基盤技術として重要な役割を果たしています。例えば、製造現場では以下のような形でICTがIoTを支えています。
- センサーからのデータ収集
- エッジデバイスでの一次処理
- クラウドでのビッグデータ分析
- AIによる予測と最適化
- 現場へのフィードバック
このように、ICTはデータの収集から分析、活用まで、IoTシステム全体を支える重要なインフラとして機能しています。
5GやBeyond 5Gとの関連性
5G(第5世代移動通信システム)は、IoTの普及を支える重要なICTインフラです。従来の通信システムと比べて飛躍的に高速化・大容量化を実現し、自動運転や遠隔医療などの新しいサービスを可能にしています。さらに、2030年頃の実用化を目指すBeyond 5Gでは、サイバー空間と実空間の完全な融合が期待されています。
エッジコンピューティングの役割
IoTデバイスの増加に伴い、データ処理の一部をクラウドではなく端末側で行うエッジコンピューティングの重要性が高まっています。現場でのリアルタイム処理により、通信遅延の解消や通信コストの削減を実現しています。
エッジコンピューティングについて詳しくは「エッジコンピューティングとは?なぜIoT・AI時代に不可欠とされるのか」をご覧ください。
生成AIとICTの融合
近年急速に発展している生成AI技術とICTの関係性と、両者の統合がもたらす新たな可能性について解説します。
生成AI(ChatGPT等)の概要
2022年末から急速に普及した生成AI技術は、ICTインフラの新たな可能性を切り開いています。例えば、以下のような活用が進んでいます。
- カスタマーサービス:24時間対応の高度な顧客対応
- コンテンツ制作:文章作成支援や画像生成
- プログラミング:コード開発の効率化
- データ分析:複雑なデータの解析と可視化
このように生成AIは、企業のデジタル化を加速させる新たなICTツールとして、ビジネスプロセスの革新に大きく貢献しています。
OpenAIが開発した「GPT」ついて詳しくは「GPTシリーズを学ぶ」をご覧ください。
ICTインフラとしての生成AI
生成AIは新しいICTインフラとして、企業のデジタル基盤を支える重要な要素となっています。特に注目されているのが、既存の業務システムやデータベースとの連携です。
例えば、社内の文書管理システムと生成AIを連携させることで、膨大な文書の中から必要な情報を即座に抽出し、要約や分析が可能になります。また、ERPやCRMなどの基幹システムと組み合わせることで、データに基づいた提案や予測を自動で生成できます。このように生成AIは、従来のICTインフラに新たな知的処理の層を加え、企業の業務効率化とデジタル変革を強力に推進する基盤として機能しています。
AI活用について詳しくは「Azure Machine Learningとは?Azure環境で機械学習モデルを独自に構築・運用」をご覧ください。
生成AI(ChatGPT等)の概要
2022年末から急速に普及した生成AI技術は、ビジネスに新たな可能性を切り開いています。例えば、以下のような活用が進んでいます。
- カスタマーサービス:24時間対応の高度な顧客対応
- コンテンツ制作:文章作成支援や画像生成
- プログラミング:コード開発の効率化
- データ分析:複雑なデータの解析と可視化
このように幅広い分野で活用されており、生産性向上や人手不足へ対応することができています。
企業でのAI活用事例
2024年現在、企業における生成AI活用は様々な分野で進んでいます。製造業では設計プロセスの効率化やマニュアル作成の自動化、サービス業ではカスタマーサポートの強化やコンテンツ制作支援などで活用されています。
生成AIを活用した製品サポート業務支援について詳しくは「部門別ベストプラクティス 製品サポート部門」をご覧ください。
またAI(人工知能)とIoTの活用による、現場のDX化ついて詳しくは「AI×IoTを始める」をご覧ください。
倫理的な課題と対応
生成AIの普及に伴い、データプライバシーの保護や判断の公平性確保、透明性の担保といった倫理的課題への対応が重要となっています。企業によってはAI倫理委員会の設置や従業員教育を実施し、適切な活用を目指しています。
政府が進めるICT戦略
デジタル社会の実現に向けて、政府各機関が推進している様々なICT戦略と、その進捗状況を解説します。
デジタル庁の取り組み
2021年に発足したデジタル庁を中心に、行政のデジタル化がどのように進められているのか、その現状と課題を説明します。
デジタル社会の実現に向けた戦略
デジタル庁は今後の重点計画として、SaaSの徹底した活用や、マイナンバーカードの普及と利活用の推進などの目標を掲げています。具体的な取り組みとして、以下のような施策を推進しています。
- 行政手続きのワンストップ化
- 地方自治体システムの標準化・共通化
- デジタル人材の育成・確保
マイナンバー制度の展開
現在、マイナンバーカードは健康保険証としての利用や、各種証明書のコンビニ交付など、活用の幅が大きく広がっています。今後はスマートフォンから様々な行政手続ができる「オンライン市役所サービス」や、日常生活で利用できるよう「市民カード化」を推進します。また、民間サービスとの連携拡大が予定されています。
行政のDX推進施策
行政サービスのデジタル化は、以下のような具体的な取り組みとして実現されています。
- ぴったりサービスによる電子申請の普及
- マイナポータルを通じた行政手続きのオンライン化
- 行政データの標準化とオープンデータ化
これらの取り組みにより、行政サービスの利便性向上と業務効率化が進み、市民と行政のデジタルによる新しい関係が期待されます。
各省庁のICT政策
各省庁がそれぞれの所管分野で推進している、特徴的なICT政策について解説します。
総務省のICT戦略
総務省は情報通信行政の主管省庁として、以下のような重要施策を推進しています。
- Beyond 5Gの研究開発支援:次世代通信規格の実現に向けた基金創設と民間企業への研究開発支援
- データセンターの国内立地推進:災害に強い地方拠点の整備と、環境配慮型施設への補助金支援
- サイバーセキュリティ対策の強化:重要インフラ事業者向けのセキュリティガイドライン策定と監査体制の整備
経済産業省のDX推進
経済産業省は産業のデジタル化を推進しており、特に以下の施策に注力しています。
- DX認定制度の運用:デジタル経営改革に取り組む企業の認定と支援措置の実施
- デジタル人材育成の支援:IT分野の実践的な職業訓練プログラムの提供と資格制度の整備
- 産業のサイバーセキュリティ対策:重要産業インフラの防御体制強化と情報共有システムの構築
サイバーセキュリティ対策について詳しくは「IoTセキュリティの基本と実践 ~サイバー攻撃から企業を守る7つのポイント~」をご覧ください。
文部科学省のGIGAスクール構想
教育現場のICT環境整備を目指す文部科学省ではGIGAスクール構想を推進しています。GIGAスクール構想は、全国の小中学校で1人1台の学習用端末と高速通信環境を整備し、デジタル技術を活用した教育環境の実現を目指す文部科学省の取り組みです。以下のような成果が現れています。
- 1人1台端末の整備完了:児童生徒向けの学習用PCやタブレットの配布と活用環境の整備
- 高速大容量の通信ネットワーク整備:校内Wi-Fi環境の整備と安定した通信環境の確保
- デジタル教材の充実と活用促進:オンライン学習プラットフォームの導入と教材のデジタル化推進
厚生労働省のデータヘルス改革
医療・介護分野のICT化として、以下のような取り組みが進められています。
- オンライン診療の恒久化:初診からのオンライン診療実施と診療報酬の見直し
- 電子カルテ情報の標準化:医療機関間でのデータ連携を可能にする共通規格の整備
- PHR(Personal Health Record)の推進:個人の健康データをスマートフォンで一元管理できるシステムの構築
産業界でのDXについて詳しくは「製造業でのIoT活用とは?導入のメリットや事例を解説」をご覧ください。
地方自治体のICT化
地域におけるデジタル化の取り組みと、それによって実現される新しい地域社会の姿を解説します。
スマートシティプロジェクト
各地で進むスマートシティの取り組みでは、ICTを活用して以下のような街づくりが進められています。
- AIカメラによる交通量の最適化:交差点や主要道路に設置したAIカメラで車両を検知し、信号機の制御を最適化して渋滞を緩和
- 環境センサーによる大気質モニタリング:市内各所に設置したIoTセンサーで大気汚染物質を常時測定し、住民への情報提供や環境対策に活用
- スマートメーターによるエネルギー管理:電力使用量をリアルタイムで把握し、需要予測に基づく効率的なエネルギー供給を実現
このようなスマートシティの取り組みにより、環境負荷の低減と市民の生活質の向上を両立する、持続可能な都市づくりが進んでいます。
地域デジタル化施策
地域のデジタル化を進めるため、以下のような取り組みが行われています。
- 地域BWAの整備:地域限定の高速無線通信網を整備し、防災情報の配信や観光情報の提供に活用
- 公衆Wi-Fiの拡充:駅や公共施設、観光スポットでの無料Wi-Fi環境を整備し、住民や観光客の利便性を向上
- オープンデータの活用促進:行政が保有するデータを公開し、民間企業による新サービス開発を支援
これらの情報化施策により、地域の情報アクセシビリティが向上し、新たなビジネスチャンスの創出にもつながっています。
住民サービスのデジタル化
行政手続きのオンライン化により、以下のようなサービスが実現しています。
- 電子申請システムの導入:住民票や各種証明書の申請をスマートフォンから24時間実施可能に
- キャッシュレス決済の対応:公共料金や施設利用料のスマホ決済に対応し、支払い手続きを効率化
- 公共施設予約のオンライン化:図書館や体育館などの予約をウェブから簡単に行えるシステムを構築
これらのデジタル化により、住民の利便性が大幅に向上するとともに、行政側の業務効率化とコスト削減も実現しています。
また、こうした取り組みにより住民の利便性向上と行政コストの削減を同時に実現し、持続可能なスマートシティの基盤が着実に整備されつつあります。今後は、より多くの地域で先進的な取り組みが展開され、地域特性を活かしたデジタル化が進むことが期待されています。
産業別ICT活用の最新事例
各産業分野でICTがどのように活用され、どのような変革をもたらしているのか、具体的な事例を交えて解説します。
製造業:スマートファクトリー
製造業では、IoTとAIを活用したスマートファクトリー化が進んでいます。例えば、摩擦圧接工法による金属加工を手がける株式会社大矢製作所では、職人の勘と経験に頼る従来の製造方法からの脱却を目指し、生産プロセスのデジタル化に成功しています。
具体的には、製造装置にIoTシステムを導入し、生産実績データや製造品質データをクラウド上に自動収集・蓄積。これにより、製品の品質保証データの提供が可能になり、さらにPower BIによる生産実績の可視化も実現しました。将来的には蓄積したビッグデータを活用し、新製品の最適な加工条件をAIで導き出す計画も進んでおり、デジタル技術を活用した製造業の進化が着実に進んでいます。
株式会社大矢製作所様の導入事例に関して詳しくは「職人の勘と経験に頼ったものづくりからの脱却を目指して、AI/IoTを活用した生産プロセスの可視化に成功」をご覧ください。
医療:遠隔診療とPHR
医療分野では、ICTを活用した品質管理の高度化が進んでいます。例えば、冨木医療器株式会社では、医療機器・医薬品の品質管理にIoTを導入し、倉庫からの出荷、配送、病院への保管までの全工程を徹底管理しています。具体的には、搬送用クーラーボックスにGPS付IoTデバイスを同梱し、温度や位置情報をリアルタイムで監視。これにより、温度管理が必要な製品の品質保証を実現し、医療現場の安全・安心を支えています。さらにクラウド基盤の最適化により、システム運用コストも80%削減に成功しました。
冨木医療器株式会社様の導入事例に関して詳しくは「医療機器/医薬品の品質管理を徹底管理し、安全・安心な医療の提供を支える」をご覧ください。
金融:フィンテックの展開
金融分野では、AIとRPAを組み合わせた業務効率化が加速しています。住宅ローンプラットフォームを運営するiYell株式会社では、月数千枚にのぼる申込書類の処理にAIとRPAを導入。AIによる高精度な文字認識と自動分類、さらにRPAによる処理の自動化により、従来は複数人で行っていた作業を1名で処理可能に。運転免許証の文字認識率は98%を超え、業務工数を75%削減することに成功しています。
これらの事例を通じて、分野を問わずICTの活用が業務効率化と価値創造の両立を実現していることがわかります。
iYell株式会社様の導入事例に関して詳しくは「AIとRPAを組み合わせ、住宅ローンに必要な様々な書類の作業工数を75%削減」をご覧ください。
小売:オムニチャネル戦略
小売業では、実店舗とデジタルの融合によるシームレスな顧客体験の提供が進んでいます。例えば、スーパーマーケットなどの小売店では、電子マネーチャージ機のデータをクラウドに集約し、リモート管理による業務効率化を実現。店舗での決済データをリアルタイムで把握し、顧客の利便性向上とバックオフィス業務の効率化を同時に達成しています。さらに在庫管理や需要予測にもデジタル技術を活用し、より効率的な店舗運営を実現しています。
小売業の導入事例に関して詳しくは「店舗での電子マネーチャージ機のデータをクラウドに集約、リモート管理による業務効率化を実現」をご覧ください。
教育:EdTechの進化
教育分野では、ICTの活用により、従来の一斉授業から個別最適化された学習環境への転換が進んでいます。例えば、一人一台のタブレット端末を活用した学習支援システムでは、AIが生徒一人ひとりの理解度を分析し、最適な難易度の問題を自動で提供。教員はリアルタイムで生徒の進捗状況を把握し、効果的な個別指導が可能になっています。また、理科実験のデータ共有や、海外の学校とのオンライン交流など、従来は実現が難しかった学習体験も、ICTの活用により日常的に実施できるようになっています。このように、EdTechは単なるデジタル化ではなく、新しい学びの可能性を広げる役割を果たしています。
ICTによる社会課題解決
ICTの活用によって、現代社会が直面する様々な課題にどのようにアプローチできるのか、具体的な事例とともに解説します。
労働力不足への対応
深刻化する労働力不足に対し、ICTは以下のような解決策を提供しています。
- RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による業務自動化:定型的なデータ入力や請求書処理などの事務作業を自動化し、作業時間を削減
- AIチャットボットによる顧客対応:24時間体制での問い合わせ対応を実現し、顧客満足度を向上させながら、オペレーターの負荷を軽減
- 遠隔作業支援システムの導入:ARやVRを活用した遠隔指導により、熟練技術者の知見を複数拠点で共有し、技術伝承を効率化
これらのICTソリューションにより、限られた人材でも生産性を維持・向上させることが可能になり、持続可能な事業運営を実現しています。
地方創生への貢献
ICTの活用により、地方の課題解決と活性化が進められています。
- サテライトオフィスの設置:高速通信環境を活用し、都市部の企業が地方でも同様の業務環境を構築
- 観光DXによる地域PRの強化:VR観光コンテンツやAIによる多言語案内で、インバウンド需要を効果的に取り込み
- 地域商社のECプラットフォーム展開:地域特産品のオンライン販売を通じて、地域経済の活性化を支援
このように、ICTは地域格差の解消と新たな地域価値の創出に貢献し、地方創生の強力な推進力となっています。
環境・エネルギー問題
環境負荷の低減に向けて、ICTは重要な役割を果たしています。
- スマートグリッドによる電力の最適化:AIによる需要予測と電力使用量の可視化で、電力供給を最適化し、CO2排出量を削減
- IoTセンサーによる環境モニタリング:大気質や水質などをリアルタイムで測定し、環境保全に必要なデータを収集・分析
- AI活用による省エネルギー制御:ビルや工場の空調・照明を自動制御し、エネルギー消費を最大30%削減
これらの取り組みにより、持続可能な社会の実現に向けた具体的な成果が生まれています。
高齢化社会への対応
高齢化がもたらす課題に対し、ICTは以下のような解決策を提供しています。
- 見守りシステムの導入:IoTセンサーやAIカメラによる24時間見守りで、独居高齢者の安全な生活を支援
- 遠隔医療の普及:オンライン診療システムにより、通院困難な高齢者への医療サービスを提供
- 介護ロボットの活用:移動・入浴支援などの身体的負担の大きい作業を支援し、介護者の労働環境を改善
こうしたICTの活用により、高齢者の生活の質を向上させながら、介護現場の課題解決にも貢献しています。
防災・減災への活用
災害対策においても、ICTは重要な役割を果たしています。
- AIによる災害予測:気象データと過去の災害データを分析し、水害や土砂災害のリスクを事前に予測
- ドローンを活用した被害状況の把握:被災地の状況をリアルタイムで把握し、効率的な救助活動を支援
- SNSを活用した災害情報の共有:避難所情報や被害状況をリアルタイムで共有し、住民の安全確保を支援
これらの技術により、防災・減災の効果を高めるとともに、災害発生時の迅速な対応と被害の最小化が可能になっています。
ICTセキュリティとガバナンス
ICTの活用が進む中で、セキュリティ対策とガバナンスの重要性が増しています。その最新動向と対策について解説します。
サイバーセキュリティ対策
デジタル化に伴うリスクへの対応として、以下のような取り組みが重要です。
- ゼロトラストセキュリティの導入:「信頼しない」を前提に、すべてのアクセスを検証・監視し、社内外を問わずセキュリティを確保
- エンドポイントセキュリティの強化:PCやスマートフォンなど、末端デバイスでの不正アクセス対策とマルウェア対策を実施
- セキュリティ人材の育成:専門知識を持つ人材の育成と、全従業員へのセキュリティ教育を継続的に実施
これらの対策により、増加するサイバー攻撃から企業の重要資産を守り、安全なデジタルビジネスの基盤を確保しています。
ゼロトラストについて詳しくは「ゼロトラストをわかりやすく解説!メリットや注意点などについて知ろう」をご覧ください。
個人情報保護と活用
データ活用と個人情報保護の両立に向けて、以下のような取り組みが進められています。
- プライバシーバイデザインの実践:システム設計段階から個人情報保護を考慮し、安全なデータ活用の仕組みを構築
- データガバナンスの確立:個人情報の収集・管理・利用に関する規定を整備し、組織全体での適切な運用を実現
- 情報銀行の実証実験:個人の同意に基づくデータ活用により、新たなサービス創出と個人の権利保護を両立
このように、個人情報の保護と利活用のバランスを取りながら、データ駆動型の価値創造を実現しています。
デジタルガバナンス
企業のICT活用を適切に管理・運営するため、以下のような施策が実施されています。
- ITガバナンスの確立:経営戦略とIT戦略の整合性を確保し、投資対効果を最大化する体制を構築
- セキュリティポリシーの整備:組織全体でのセキュリティ対策の基準を明確化し、統一的な運用を実現
- コンプライアンス体制の強化:法令遵守とリスク管理の体制を整備し、デジタル時代の健全な経営を実現
これらの取り組みにより、ICTの効果的な活用とリスク管理の両立を図り、持続可能なデジタル経営の基盤を確立しています。
生成AIのセキュリティとガバナンス
生成AI活用に伴うリスク管理と適切な運用のため、以下のような対策が重要となっています。
- プロンプトインジェクション対策:不正な入力による想定外の出力を防ぐ、入力値の検証と制御を実施
- 機密情報の保護:学習データや生成内容に含まれる企業秘密や個人情報の漏洩を防止
- 出力内容の品質管理:不適切な内容や著作権侵害を防ぐモニタリング体制の構築
これらの対策により、生成AIの安全で効果的な活用して企業のデジタル競争力を高めています。
ICT活用は企業経営の生命線! データ活用とAIで進化するビジネス変革
ICTは、私たちの社会やビジネスに不可欠な基盤技術として進化を続けています。本稿で見てきたように、生成AIやIoTなどの新技術との融合により、製造、医療、金融など、あらゆる産業でビジネス変革が加速しています。また、労働力不足や環境問題、高齢化といった社会課題の解決にも、ICTは重要な役割を果たしています。今後も技術の進化と社会実装の両面から、ICTの発展を注視していきましょう。
一方で、ICTの進化に伴い、企業が扱うデータ量は急速に増大しています。セキュリティやプライバシーの確保はもちろん、散在するデータの統合と効果的な活用が、新たな経営課題として浮上しています。今後は、こうしたデータを企業価値の創造に結びつける、データドリブンな経営への転換も求められるでしょう。
データドリブン経営の実現について詳しくは「現代のデータドリブン経営 - Azureサービスを活用したデータ統合と価値創造」をご覧ください。